鬼の国08
そんなわけで空間破却。
空間破壊性結果論転移。
夜の時間。
僕らはクランゼの研究室に跳躍した。
いわゆる瞬間移動。
「すわ」
クランゼが驚いていた。
さもあろう。
突然知人が現われれば驚きもする。
「毎度ですが」
とクランゼ。
「唐突に現われますね。マサムネ様は」
「褒めて良いのよ?」
「皮肉のつもりだったのですけど」
知ってる。
「魔の国……」
とジャンヌ。
まぁ初めてではあろう。
基本的にテロリスト出身であるから。
「で?」
クランゼが問う。
「此度は何用で?」
「特に深い意味は」
あっけらかんだが事実でもある。
「?」
「えーと」
斯く斯く然々。
「鬼の国……ですか……」
「さいです」
首肯して紅茶を飲む。
ウンディーネの紅茶は一級だ。
「で夜は安全な場所にと?」
「さいです」
紅茶を一口。
僕ことマサムネ。
フォトン。
ツナデ。
イナフ。
ウーニャー。
フィリア
ジャンヌ。
そうそうたるメンツだ。
「というわけで宿をどうにかしてください」
「それは構いませんが……」
ヒロインたちを見る。
「どうしたものか?」
表情がそう語っていた。
「…………」
クイと紅茶を飲み干す。
僕は、
「木を以て命ず。薬効煙」
と薬効煙を作って、
「火を以て命ず。ファイヤー」
くわえた薬効煙に火を点ける。
煙を吸って吐く。
「余所様用に宿くらいあるでしょ?」
「ですね」
クランゼはスラスラと書類に羽ペンを奔らせた。
最後に蝋の印を押し、
「どうぞ」
と僕に差し出してくる。
「いえいえ」
その書類を受け取る。
内容を聞くに、
「国際魔術学院の賓客」
の証明書だった。
「なにコレ?」
「文言通りですが?」
「賓客」
「実際にそれだけの資格を持っています故」
「いやぁ」
「まぁ賛辞ではありますが」
紅茶を飲むクランゼ。
僕は薬効煙を吸う。
「それさえあれば概ねの宿は優遇してくれますよ」
「にゃる」
そういうことならお言葉に甘えよう。
「リリアは?」
「今日はもう上がっていますよ」
「さいか」
とりあえず明日でもいいだろう。
そんなことを思う。
それから宿に移動。
「リリア……というと?」
懸念は正しい。
「現地妻」
サクリというと、
「……っ!」
ヒロインたちが険しい表情になった。
ウーニャーを除く。
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「恐いよ?」
「元からこんな物だよ」
僕としては嘆息するのみだ。
趣味が悪いにも程がある。
結局そこに行き着くのがなぁ……。
僕は前世で何をした?