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魔の国05

「そもそも」


 夜が更けていく時間帯。


 僕はフォトンに問うた。


「何で僕なのさ?」


 それは至極真っ当な問いだったろう。


 対してフォトンは言った。


「私に都合のいいような人間を召喚する……というのが私の異世界からの召喚の魔術の特性ですゆえ」


「それはまぁわかるよ」


 僕は頷く。


「光の国の王城からフォトンを脱出させるために僕が呼ばれたんでしょ?」


「それは原因の一端でしかありません」


「原因の一端?」


「はい」


 フォトンは首肯する。


「要するに私のつづった魔法陣……ウィッチステッキと呼ばれるマジックアイテムですね……は私に都合のいい人間を召喚するためのものです」


「?」


「つまり私を解放するだけでなく……私が魅力的に感じる人を召喚する……それはそんな召喚魔術なんです」


「そんな大雑把な魔術があるの?」


「であるから私が惚れずにはいられないマサムネ様が召喚されたんです」


「僕に魅力は無いと思うけどな」


 そう言って僕はオルトの用意してくれた部屋のベッドにダイブした。


 その同じベッドに腰掛けるフォトン。


 その部屋はダブルベッドで二人で一つのベッドを共有するものだった。


 オルト……余計なことしくさってからに。


「現に私はマサムネ様に惚れずにはいられません」


「光栄なことで」


 肩をすくめる僕。


「まるでツナデだね」


 そう愚痴る。


「ツナデ……?」


 コクリとフォトンは首を傾げる。


「僕の義妹」


「あっちの世界に妹さんがいるのですか?」


「うん。まぁね」


 僕は頷く。


「ツナデも僕に惚れこんでいたなぁ」


 しんみりとそう言ってしまう。


「蓼食う虫も好き好きだね」


「たでくう……?」


 わからないとフォトン。


 僕はベッドに寝転んでひんやりと冷気を感じながら言う。


「ツナデも僕に惚れていたからなぁ」


「私のライバル……ですね」


「とは言ってもあっちの世界に置き去りにしたんだけどね」


 皮肉気にそう言うと、


「ごめんなさい」


 とフォトンが謝った。


「何を謝るのさ?」


 僕が疑問に思うと、


「だって……」


 フォトンは言う。


「だって……マサムネ様を勝手にこちらの世界に呼び出したのは……私のエゴでしかないのですから……」


 どうも罪悪感を持っているフォトンらしい。


 僕は上体を起こしてフォトンの頭部を腕に抱くと、


「気にしなくていいよ」


 フォトンの頭を撫でる。


「少なくともこっちの世界ではフォトンが僕を必要としてくれる。それだけで僕は救われるんだから」


「マサムネ様……」


 フォトンは感無量といった有様だった。


「申し訳ありません……申し訳ありません……」


「大丈夫だって」


 クシャクシャとフォトンの髪を撫ぜる。


「僕がフォトンを嫌いになることなんかないから」


「ありがとうございます……! 私の勝手に巻き込んでおきながら何もできない私を許してくださって……!」


 フォトンは僕の腕の中で身を震わせる。


「それより早く寝ようよ」


「…………」


「明日にはこの要塞都市を抜け出て魔の国の王都に向かうんでしょ?」


「そう……ですね……」


 フォトンが答える。


「王都に向かわねばなりません」


「なら寝よう。明日も早いんだよね?」


「一緒に寝てもいいですか?」


「もともとダブルベッドなんだから一緒に寝るしかないでしょ」


「抱いてくださっていいんですよ?」


「フォトンがそう言っている内は抱くことはないね」


「何でですかぁ……」


 うう、と唸るフォトン。


「私は……フォトンは……マサムネ様のことが、それはもう好きで好きでしょうがないんですよ?」


「あっそ」


 淡泊に僕は言った。


「マサムネ様は淡白にすぎます。同性愛者や幼児性癖では……」


「違うって言ったはずだよ」


「では何で私を抱いてくださらないのです」


「そういうのはもうちょっと互いのことを理解してから……ね?」


「私はいつでもオールオッケーですからね?」


「わかったよ。抱きたいと思ったら抱くことにするから」


 そう言う他なかった。


「本当ですね? 嘘じゃないですよね?」


「ま、気が向いたらね」


 ざっくばらんに僕は述べた。

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