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鬼の国03

「ふうむ」


 僕は現われた鬼を遁術で殺戮していた。


 今は夜。


 月の明かりの照らす夜。


 ぶっちゃけると月が太陽の光を反射しているだけだ。


 そう云う意味では、


「太陽が無ければ」


 という問題は夜にも派生する。


 いいんだけどさ。


 ところでいつもより頭は軽い。


 孤軍奮闘している僕。


 その周りでヒロインたちが寝ていた。


 基本的に亜人の対処は誰にでも出来る。


 ただ戦いの慣れと勘所の持ち様から言って……僕とツナデとイナフが適切なのは先述通り。


 何せアドレナリンを調整して眠気を吹き飛ばせるため夜間の警戒や哨戒もかゆいところに手が届く。


 ここで複雑なのは超威力を持つヒロインたちが能力に負んぶに抱っこのため真っ当な戦闘ならともあれ、こういうゲリラ戦に慣れていないことだ。


 なので夜に徹夜して警戒哨戒する人材が要った。


 で、僕とツナデとイナフがその担当に。


 一日二日と言わず一週間くらいなら連続して動けるんだけど、根を詰めてもいいことはないのでトリオで三日交替の徹夜組。


 印を結ぶ。


「火遁の術」


 灼熱が鬼を襲う。


 正確にはその幻覚だ。


 が、脳が熱いと言えば鴉も白くなる。


 個人を小宇宙と例えた人間は偉い。


 結局のところ自分と世界とが二極化していることこそ知性である。


 その上で自分が熱いと思えば立派にソレは現実なのだ。


 遁術は客観的には非物理的干渉だが主観的には物理的現実である。


 南無阿弥陀仏。


 無論、「遁」走の「遁」を用いている以上、


「遁術は逃げるための術」


 でもある。


 既に霧遁の術と透遁の術は掛けている。


 オーラの展開にはカロリーを消費するけど、別に今更でもある。


 世界樹の実もあるし。


 なお僕の場合はリミッターを設けているため、比較的楽にすむ。


 能力全開で戦う必要も無いためだ。


 とりあえず近寄った鬼には相応の対応はするが、あまりに神経過敏だろうか?


 何となくソリティアをしながらオーラで哨戒し、暇を潰す。


 ちなみに、


「ソリティア」


 って


「孤独」


 という意味らしいね。


「大丈夫ですか?」


 尋ねてきたのはフォトン。


「ん?」


 そちらに視線を振る。


「寝てなくて良いの?」


 起きているフォトンに尋ね返す。


「ええ、まぁ」


 何でも無限復元は睡眠不足の不慮に関しても適応されるらしく、別に徹夜を何年続けても体に害は無いとのこと。


 便利だね。


 無限復元。


 当人にとっては、


「死ねない呪い」


 という枷ではあるけど不老不病不死は少し憧れる。


 元の世界のサブカルには、


「死ねないことは地獄だ」


 というテーマをたまに見るけど、


「そもそも未来に死ぬことを想定して生きている日本人が居るだろうか?」


 と反論したくもなる。


 そう云う意味では不老不死は長生きの延長線上なのかも知れない。


 いいんだけどさ。


 別に。


「しっかり哨戒するから寝てていいよ」


「いえ、出来れば情事を」


「それなんだよなぁ」


 嘆息。


 なんやかやでヒロインが増えていくんだけど、


「何とかならんか、この状況」


 そうも思う。


 慕われるのは恐縮だけど、あまりにも数が多すぎる。


 元の世界ではツナデくらいしか味方がいなかったため困惑している。


 まぁそれもある。


 だからといってこっちでの味方の多さもまたどう取り扱って良いものか。


「フォトンは一目惚れだっけ?」


「今は出会った頃よりもっと好きですよ?」


「ありがとさん」


 薬効煙を吸いながらカードを並べる。


「私にも一本」


 まぁいいけど。


 薬効煙を渡して魔術で火を点けてやる。


 フォトンが火の魔術を使えば地形が変わるためコレはしょうがない。


「不思議な味ですね」


「字面で言うなら良薬口に苦しの典型だね」


 一応鎮静効果を持つ薬なのだ。


 精神的コンディションを保つ薬術の一端。


 ここで説明する気も無いけども。


「二人で何かしませんか?」


 ソリティアをしている僕を見てフォトンがそんな提案。


「いいけどカード見えるの?」


 僕とツナデとイナフは夜目が利くけど、他のヒロインはそうでもない。


 こと夜襲朝駆けは僕らに利がある。


「ふむ」


 月明かりではトランプのカードは見えないらしい。


「夜目ってどうやったら身につくんです?」


 あんまり言いたくないなぁ。


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