雪の国31
「くあ……」
欠伸。
「ウーニャー……」
欠伸。
暇だった。
トナカイのソリに乗せられて僕らは次の国へと向かう。
ヒロインたちはトランプに興じていた。
わいわい。
がやがや。
「まっこつ羨ましか」
ソリの御者が言う。
「何が?」
と僕。
「美少女揃いの一個旅団とは」
「まぁ……」
有り難くはあるよね。
少なくとも全員から深刻希薄問わず好意を寄せられている身とすれば。
「変わってあげましょうか?」
「無理たい」
でしょうね。
僕は、
「木を以て命ず。薬効煙」
と薬効煙を生みだして、くわえると、
「火を以て命ず。ファイヤー」
と薬効煙に火を点ける。
煙をスーッと吸ってフーッと吐く。
「タバコは体に悪かぞな」
「薬なんで」
「余計じゃ」
「麻の方ではないので」
「なのかや?」
「ええ」
プカプカ。
「次の村にはいつ頃?」
「日が暮れる頃には着くよ」
「有り難い」
王都であれだけ派手に立ち回ったのだ。
なるたけ早く雪の国を脱したかった。
何と言っても雪の妖精の報復が怖い。
いや、怖くないんだけど、
「面倒くさい」
とは言える。
雪の国に雪の妖精が居るのは当たり前で、これからも生きていくんだろうけど、中にはスノウ王を崇める連中も居る。
ゲリラに徹されたら頭痛の種だ。
「…………」
煙を吸って吐く。
「ほにゃら」
ウーニャーが安楽した。
まぁ僕の頭に乗っている以上、薬効煙の副流煙をもろに吸っているためしょうがないけどさ……。
「ウーニャーも吸う?」
「ウーニャー。別にそこまでではないかな?」
「なら結構」
まったくもって。
「あっしは興味あるね」
「ほい」
と一箱分だけ薬効煙を渡す。
「どうも」
と御者さんは笑った。
「ウーニャー」
「なぁに?」
「パパ」
「だからなぁに?」
「次の国はどんなとこ?」
「そこでトランプに興じている赤色の女の子に聞いて」
元より僕はツナデと合わせてドリフターズだ。
それについては納得してるけど、地理面で僕に振られても困る。
「ウーニャーのオーラでわかんないの?」
「情報量が多すぎて何が何だか」
「まぁそうなるよね」
煙をプカプカ。
「剣の国が何処にあるかが分かれば御の字なんだけど……」
「無茶を言う」
知ってます。
期待はしてないさ。
で、
「ジャンヌ?」
「ああ!」
どした?
「いきなり話しかけないでくださいよ! 負けちゃったじゃないですか!」
どうやらスピードをしていたらしい。
僕の声かけは邪魔だったとのこと。
「まぁそれについては謝るけど」
プカプカ。
「それで何でしょう?」
「次の国はどんなとこ?」
「面倒な国です」
「つまりいつも通りと?」
「そうなるんですかね」
面倒くさい国なら今まで幾らでもまわった。
そう云うと、
「私は新参者なのでマサムネ様たちの旅情を知らないんですけど……」
「まぁこれから積み重ねれば良いだけでしょ?」
「そうなんですけどねぇ……」
赤い瞳が寂しげに揺れた。
ソリは奔走する。
有り難いことだ。