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雪の国29


「火と金を以て命ず。超振動兼超高熱刀」


 僕は長刀を魔術で生み出す。


 僕の身長より長い刀が地面の雪に振れてジュッと蒸発させる。


「じゃあまぁ作戦自体は云ったとおりに」


 先頭は僕。


 しんがりはフィリア。


 中心がジャンヌで、フォトンとツナデとイナフは遊撃。


 万年雪もトライデントの前には無意味だ。


 吹雪は起きない。


 そして大して服を着込んでいない僕らは注目に値した。


 もっともその最たるは僕の持つ耳鳴りのする長刀にあるのだろうけど。


 特に王都の住人や雪の妖精たちも訝しげに見やるだけで止めに入る者はいない。


 そんなわけであっさりと僕らは王城の入り口についた。


 氷の騎士がこれまた氷で出来た剣を抜いて牽制する。


 数は二体。


「何者だ? 何用だ?」


「前者にはセブンゾールご一行。後者には雪の王の弑殺」


「巫山戯ているのか? 不敬罪であるぞ」


「本気なんだけどなぁ……」


「では死ね」


「そっちがね」


 あまりに遅い。


 超振動兼超高熱刀は熱したナイフでバターを切るようにあっさりと氷の騎士たちを分解した。


 カランコロンと氷の騎士の頭部が僕の足下に転がる。


「たとえ我らをやれても門は開かぬさ」


「…………」


 特に傾聴すべき事でもないので僕は氷の騎士の頭部を踏みつぶして陶器のように割った。


 それから重厚な鉄の門を長刀で切り裂いて中に入る。


 笛が鳴らされた。


 警戒信号。


 状況の確認と戦力の集中が同時に行なわれる。


 重厚な門に穴を開けて中に入ると城の中と外から雪の妖精が襲ってきた。


 ティンカーベルのような愛らしい妖精。


 雪だるまを模した微笑ましい妖精。


 氷の騎士を象ったアイスゴーレム。


 無論、僕らに都合が悪くなることもなかったけど。


 既にオーラで城の全体像は確認できている。


 後は進むだけだ。


「止まれ!」


「殺すぞ!」


 妖精の言っていい言葉じゃないだろう。


「死にたい奴だけ前に出てね」


 語尾にハートマークをつけてキャピッと僕は云う。


「上等!」


 前方から襲ってくる敵は僕の長刀が焼き切り滅ぼす。


 背後、主に王都の城外にいる妖精たちはトライデントの干渉を受けて只の水と相成る。


 無念。


 中央のジャンヌは主に僕のフォロー。


 別段必要もないのだけど僕が長刀を振るうよりジャンヌが灼熱の炎で蒸発させた方がスムーズなのは確かだ。


 とまれ一個旅団は一つの脅威の砲弾と化し雪の国の王城を攻略せしめるのだった。


 雪の国の王……スノウ王は女性だった。


 中々神秘的な外見をしているし見栄えもいいのだけど今はヒステリックに喚いていた。


 まぁテロリストに平然と城内を闊歩されて楽観論に奔る王がいるのならそっちの方がどうかとは思うけど。


 サクリサクリと妖精たちが切り滅ぼされていく。


 サクリサクリと妖精たちが水分に戻されていく。


 サクリサクリと妖精たちが熱に蒸発されていく。


 こと局面においては既に決着がついているのだ。


「後は……っ!」


 僕はまた一体襲ってきた雪の妖精を切り伏せて、


「スノウ王に謁見するだけだね」


 最短コースで謁見の間へ。


 そしてそこにはスノウ王がいた。


「拝謁すること光栄の極み。スノウ王におかれては如何に?」


 僕は長刀を魔術で虚空に返して雪の妖精の王に慇懃に一礼した。


「よくもいけしゃあしゃあと……!」


「まぁ自覚的ではありますけど」


「ここが汝らの死地よ!」


 スノウ王が手を振ると、空気中の水分が凝固して雪の妖精が謁見の間に溢れた。


 だがしかし、


「…………」


 ジャンヌの発現させた灼熱の業火の前には十把一絡げではあったのだけど。


「なんと……いう……!」


 スノウ王は驚愕ここに極まれりと云った様子だ。


 反則じみた存在と云うことに異論は無い。


 少なくとも僕でもジャンヌのパイロキネシスは驚異である。


 スノウ王の気持ちは完全に汲み取れた。


 だからって手心が加わるわけでもないんだけど。


「何故に妾を襲う!」


 ほとんど悲鳴じみた抗議だった。


「可愛い女の子が喜んでくれればそれでいいって所かな?」


「意味が分からん!」


「気に入った人間を氷の彫像にして愛でてるんでしょ? だからレジスタンスが出来るんだよ? 反抗勢力がいるなら国の地下には鬱憤が溜まっていて、それ故にこういった反動は自然の摂理と思うんだけど……」


 薬効煙を加えて火を点けながら僕は云う。


 煙を吸ってフーッと吐く。


「そんなわけでさようなら」


 僕の言葉は死神の鎌だった。


「くっ!」


 さらに雪の妖精を具現しようとして、それ以上動けなくなるスノウ王。


 トライデントが水分に干渉して雪の妖精王を空間に縫い付けたのだ。


 後は簡単。


 オーブンでチン。


 ジャンヌの放った灼熱の業火によって灰は灰に、塵は塵に還った。


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