魔の国04
オルトの屋敷で受けた歓待は大したものだった。
フォトンがオルトの足を治したのが効いたのだろう。
執事さんやメイドさんから、
「ご主人様の足を治してくださってありがとうございます」
という言葉を何度も聞いた。
ちなみに僕は何の関係もないのだけど、ともあれフォトンのバーサスの騎士としてまとめて歓迎を受ける羽目になるのだった。
いや、まぁ御馳走は美味しかったけどね。
ヒカリエビのムニエル……アンカーサケのカルパッチョ……五目鳥の姿焼き……パスタのカルボナーラ。
その他諸々の美食。
オーラはカロリーを消費する。
今まで消費したカロリーを超えるだけの食事を提供されたのだった。
「マサムネ様は大食漢でいらっしゃいますね」
とはフォトンの言葉。
「…………」
まぁ否定はしない。
そんなこんなで僕はモキュモキュと御馳走を平らげる。
その後に待っていたのは風呂だ。
どうやら魔の国でも温泉は湧くらしく、僕とフォトンはだだっ広い浴場に二人だけで入るのだった。
当然水着は着用。
その辺の線引きは厳しいぞ僕は。
「裸でもいいですのに」
とはフォトンの言。
「だぁめ」
と僕は拒否する。
そんな僕の手を取ってフォトンは自身の乳房に押し付けてくる。
あわわ……あわわ……。
理性が崩壊しそうになる僕だった。
そんな雑念を取り払って、
「……てい!」
僕はフォトンにチョップした。
「あうた……!」
フォトンが悲鳴を上げる。
「何するんですか……」
「それはこっちのセリフだよ」
何をするんだフォトンは……。
「やっぱり私は魅力が無いですか?」
何の冗談だと思ってフォトンを見やると、
「…………」
フォトンは真剣な目で僕を捉えていた。
それはつまり、
「本気……?」
そういうことなのだろう。
「本気です」
フォトンは否定しなかった。
否定してほしかったんだけどなぁ……。
「私の胸は平均より大きいと思うんです」
「…………」
まぁ事実だ。
「腰もくびれていて……」
「…………」
「お尻も突き出ていると思うんです」
「…………」
まぁ事実だ。
「一応女体としては十分すぎるかと」
「…………」
まぁ事実だ。
「それでもマサムネ様には足りないのですか?」
「…………」
足りないわけじゃ……ないけどね……。
言葉にせずそう思う僕。
「もしかしてロリーな体質が好みなんですか?」
「……てい!」
僕はフォトンにチョップする。
「うぐおお……!」
と頭部を押さえて呻くフォトン。
「誤解を招くようなことを言わない」
忠告する僕に、
「だってマサムネ様は私を抱いたりしてくれないじゃないですか……」
不満そうなフォトン。
「そんな関係を僕は望んでないからね」
「ではどうやってマサムネ様の気を引けば……!」
「気を引く必要が無いから……」
僕はうんざりする。
「でも私はマサムネ様のモノになりたいのです……!」
「あっそ」
そう言って僕は風呂に入った。
肩まで浸かって体を温める。
「マサムネ様……」
とフォトンが僕のすぐ隣に入浴してくる。
そして僕の腕に抱きついて豊満な胸を押し付けてくるのだった。
「六根清浄……六根清浄……」
僕は雑念を取り払い、
「……てい!」
とフォトンにチョップして、
「僕は控えめな美少女が好みなの」
そう言う。
「でもそれではアプローチ出来ないじゃないですかぁ……」
「アプローチの必要が無いから」
「私はマサムネ様と恋仲になりたいんですの」
「そういうのはもうちょっとお互いを知ってからね」
「うう……。私にはマサムネ様しかいないのに……」
呻くフォトン。
「やれやれ」
そう呟いて僕はお湯に肩まで浸かる。
本当にやれやれだ。