雪の国28
「ふい」
「ふう」
「ウーニャー」
僕らは浴室で風呂を堪能していた。
僕とフォトンとウーニャー。
僕とフォトンは水着姿。
ウーニャー(人型)は全裸だけど特に性欲は動かない。
まぁ今更。
それから三人でとりとめのない話をしているとこんな問いが発せられた。
「マサムネ様は私たちをどの様に定義しているんでしょう?」
「都合の良いヒロイン」
「またそういう偽悪的なことを……」
「偽悪も悪だよ?」
「マサムネ様は例外ですが……」
「何を以て?」
「乙女主義というか処女主義というか」
「……まぁね」
しぶしぶ認める。
「距離の取り方が残酷ですよね」
「キープしてると思って貰って構わないよ」
実際そんな側面は有る。
「まぁそれでも誰一人離れていかない辺り乙女の想いを察してください」
「有り難すぎて涙が出るね」
パシャッと顔に湯をかける。
「この前はツナデと同室しましたね」
ギクリ。
「キスしましたか?」
「しましたよ?」
若干押され気味。
「では私とも……」
……いいけどさ。
「虚しくない?」
「それでもです」
「何でそんなに僕を求めるの?」
「乙女は好きな人の前ではビッチになるんですよ?」
「あー……」
フォトンやツナデを見れば反論は出てこなかった。
「不安なんです」
「何が?」
「マサムネ様を失うことが」
「それとキスがどう繋がるの?」
連立方程式としては破綻してるようだけど?
「思い出が欲しいんです」
「僕との関係の?」
「仮にラセンを見つけたとて相手も無限復元。どの様な決着を向かえるかは私にも予想がつきません」
僕は違う考えを持ってるんだけど、
「だね」
とりあえず肯定。
であれば時の流れに一人取り残されることだってあり得る。
「だから必死になって僕を繋ぎ止めたいの?」
「前にも申しましたけど一目惚れです」
「…………」
「マサムネ様があまりに魅力的です故、慕情が溢れて零れてしょうがないんです」
「趣味の悪い……」
「でも付き合ってくださってますよね?」
「まぁあの地獄から僕を救ってくれた恩人だからね」
「それで十分です」
何がさ?
「すこしでもマサムネ様を繋ぎ止める鎖があるのなら恋愛ルール無用の残虐ファイターとしては大いに利用します」
「賢いことだね」
嘆息。
「だから不安なんだ?」
「はい」
「じゃあキスしよっか」
「お願いします。なんなら抱いてくださっても……」
「地獄を見るよ?」
「その気になればマサムネ様以外の道連れを滅却してまた二人旅に戻すことも可能ですし……」
云われてみればその通り。
要するにヒロインたちはフォトンの温情によって生かされているわけだ。
本当に、
「その気になれば二人旅に戻せる」
というアドバンテージがフォトンにはある。
それを実行しないのはあくまで僕の偽悪を把握してのけてるからに相違ないだろう。
「まぁそんな未来予想図は脇に置いておいて」
「破棄はしないんだね」
「最終手段です」
「さいでっか」
「キスしてください」
「へぇへ」
僕はフォトンにフレンチなキスをした。
残酷ではある。
ツナデの時にも思った感情だ。
「ん……っ!」
でもこの程度で可愛いヒロインたちが満足するなら偽悪にも奔ろうと云うもの。
この件については偽悪どころか悪だけど。
「ウーニャー……」
ウーニャーが羨ましそうに僕とフォトンのキスを見ていた。
キスを終えて糸を引いた唾液をフォトンが美味しそうに舐める。
それがまた淫靡的で、
「……はぁ」
僕の性欲を刺激する。
おそらく自覚的なのだろう。
乙女心は時に聡く立ち回る。
「ウーニャー! ウーニャーも!」
「大人になったらね」
「ウーニャー……」