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雪の国27

 一応のところレジスタンスとして顔の知られているリイナとは別行動で雪の国の王都に僕らは入った。


 検問はあったけど特に何事も無くパス。


 元より妖精側に見知らぬ旅人と険悪になる要素はない。


 あくまで表向きの話だけど。


 裏?


 さっき王都から少し離れたところで雪の妖精……アイスゴーレムをやっちまいましたけど何か?


 無論そんなことを主張することもない。


 沈黙は金だ。


 さすがに王都は繁盛していた。


 市場は流動性が高いし、時計産業も活発だ。


「ぼったくりか」


 と突っ込みたくなるような値段の時計を商人が嬉々として買っていく。


 後は雪の国を出て転売すれば商人もほくほくと云った具合なのだろう。


 機械仕掛けの時計は摩耗の少ない部品として宝石が使われるためどうしても値段が天井知らずになってしまうのだ。


 まさにスイス。


 そんなこんなで暖房結界を張って吹雪が暖房結界内に入ってこないように拒絶して、僕らは市場を一通り歩くと、


「やれ」


 商人に紹介された一級のホテルにチェックインした。


 お金はフォトンが。


 今更だけど。


 僕は薬効煙に火を点けてプカプカと楽しんでいる。


 ホテルのロビーではコーヒーや紅茶を頼んだヒロインたちが顔をつき付け合わせてセブンブリッジに興じていた。


「誰がホテルでマサムネと同室になるか?」


 ヒロインたちには譲れない戦いだ。


 僕は、


「それほどマサムネに価値は無いと思うんだけどなぁ……」


 なんてぼやくだけだ。


 薬効煙を吸ってフーッと吐くと、


「ウーニャー」


 とウーニャーが喜色の声をかけてくる。


「パパは魅力的だよ?」


「恐悦至極」


 プカプカ。


「ていうかウーニャーのインプリンティングは解けないの?」


「ウーニャー!」


 さいでっか。


 まぁ当人が僕を好きというのなら好きにさせるだけなんだけど。


 天然人為災厄(正確には人じゃないんだけど)ことウーニャーが好き勝手大陸を歩き回るのは平和主義者にとっては天使のラッパだろう。


 特に哀悼の意を表わすわけじゃない。


 結果として今日はウーニャーとフォトンと同室と云うことになった。


 本当に……、


「何が嬉しいんだろうね?」


 ホテルの部屋を取ってさっそく僕は今日の日課を消化することにした。


 筋トレだ。


 ツナデとイナフと組み手出来ない分だけ体造りに邁進する。


 今は指立て伏せ。


 背中にフォトンを乗っけながら。


「あのう」


 とフォトン。


「全く以て今更なんですけど」


「なぁに?」


「何がそこまでマサムネ様を駆り立てるのですか?」


「一つは向こうの世界での習慣」


「ソレは聞きました」


 だね。


「でも必要の無い技術だったのでしょう?」


「ま、ね」


「では何故?」


「こっちの世界では大いに有用だから」


「そんなものでしょうか?」


「だって警察機構が存在しないから自分の身は自分で守らないといけないし」


「一応犯罪抑止力はありますよ」


「国ごとの軍ね」


「ええ」


「この国ではアイスゴーレムがソレに当たるのかな?」


「それもええ」


「でも……法律は時に弱者の味方になってはくれない。それは神の国に居るときの一件で十分味わったでしょ?」


「結果杞憂に終わりましたが……」


「僕が自分を鍛えていたおかげだよね」


「そう云われれば返す言葉はありませんが……」


「何?」


「謝らせてください」


「気にしてないよ」


「それでも私の引き連れてきた面倒事です。マサムネ様に労を強いました。申し訳ありません。そしてそれでも私は一緒しても良いんでしょうか?」


「大丈夫。ていうか僕としてもブラッディレインに会ってみたいし。そう云う意味ではフォトンを都合良く利用してるともとれるかな?」


「そこまで自己嫌悪なされないでください。マサムネ様がいらっしゃったから私は光の国を抜け出せたのです。結果論としてラセンと私の事情に巻き込む形になってしまって申し訳ないのはこっちの方です」


「そっちも自己嫌悪はほどほどにね」


「まあ。マサムネ様はお優しいですね」


「フォトンが僕に優しい程度にはね」


 指立て伏せをしながら皮肉を言う。


 元より僕らはそんな関係だ。


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