雪の国23
王都の十数キロ手前で僕らはソリを降りた。
一応暖房結界を張っているため寒くはないし、トライデントで気候を操作しているため吹雪もない。
ある意味で吹雪をおさめたことが宣戦布告とも取れる。
ソリの御者は、
「堪忍だ」
とトナカイを反転させて逃げた。
まぁ王都には近づけないだろう。
気持ちは分かる。
それから歩いて王都に向かう。
「ウーニャー……」
ウーニャーが僕の頭の上で鳴いた。
「温かいね」
ですね。
全てはジャンヌのおかげなんだけど。
上は二メートル。
下は地面すれすれ。
そんな感じで暖房結界を張ってるため暖かさには困らない。
サクサクと歩いていると、
「とまれ」
と騎士に忠告をうけた。
見た覚えのある騎士だ。
全身が結晶で出来ている。
氷の騎士。
アイスゴーレム。
王都の外を徘徊していたらしい。
「王都に向かっているのか?」
「そうですけど」
「というかだな」
「何でしょう?」
「この熱気はどうにかならんか?」
そりゃまぁアイスゴーレムが暖房結界に入ったら溶ける以外の未来はあんまり無いだろうけど……。
「熱気を止めろ」
「嫌」
特に思うこともなく拒絶する。
「スノウ王の代行として命じる」
「でっか」
「どうしても止めないと?」
「だって寒いし」
本音だ。
他に理由はない。
「では死ね!」
そして氷の騎士は氷の剣を振るってきた。
スルリと躱す僕。
「ジャンヌ……」
「はいな」
意図は十全に伝わった。
灼熱の業火が顕現する。
人に向ければ骨すら残さず塵へと還す圧倒的熱量。
当然氷の騎士なぞ一瞬で蒸発する。
「貴様ら!」
他のアイスゴーレムたちが殺気を湧かせる。
徒労だけどね。
「あんまり争いたくないんだけど……」
いけしゃあしゃあと僕。
「巫山戯たことを!」
死を怖れないアイスゴーレムたちに灼熱の炎が迎え撃った。
あまりの高熱に存在さえ許されない。
万年雪はおさまっているため天の理はこちらに向いている。
そうでなくとも想像創造も世界宣言も必要としないジャンヌのパイロキネシスは脅威の一言だけど。
サクリサクリとアイスゴーレムたちが蒸発していく。
最終的に徘徊していた氷の騎士は全滅した。
「もうジャンヌ一人でいいんじゃないかな?」
そんなことを思う。
「一応のところ一人か二人はついていて貰いたいのですけど……」
「だろうね」
とまれ、
「雪の国の王都に喧嘩を売ったわけだ」
後ろへ下がる。
そんな選択肢は僕らにはない。
「とりあえず」
コホンとリイナ。
「レジスタンスの基地に案内します」
そう言って王都の壁を回る形で地下基地へと向かう僕らだった。
針葉樹の林の中に入り口はあった。
雪に覆われていて、
「なるほど」
見つけるのは困難だろう。
別にレジスタンスには興味ない。
それはヒロインたちも一緒だろうね。
でもまぁ拒絶するほどでもない。
そにゃわけで、
「お邪魔しまーす」
と僕は雪の国のレジスタンス基地に入るのだった。
「しがらみですね」
とはツナデの言。
「まぁそう云わず」
とフォトンが苦笑した。
結局のところ、
「そういうこと」
なのだ。