雪の国19
「火と金を以て命ず。超振動兼超高熱刀」
僕は長物の刀を魔術で具現した。
超振動。
超高熱。
曰く、
「存在を滅ぼす凶剣」
には違いないのだ。
村の吹雪はおさまっている。
フィリアのおかげだ。
「邪魔立てするかぁ!」
「邪魔はするさ」
僕は刀をダラリと下げて騎士たちへと向かう。
ヒロインたちは誰も手出ししなかった。
「その必要がない」
そんな共通認識。
「では死ね」
騎士の一つ。
アイスゴーレムの一体が襲いかかってきた。
手に持つのは氷の剣。
もっとも、
「…………」
その剣は僕の刀の前に蒸発したのだけど。
「な!?」
驚く騎士に、
「…………」
僕はサクリと刀を刺した。
超振動兼超高熱刀は振動と高熱を有する刀だ。
氷で出来たゴーレムなぞ相性が良いにも程がある。
結果として超振動で硬い氷の体を貫いて、超高熱で氷の体を蒸発させる。
「ルォォォォ!」
絶叫をあげて氷の騎士は消滅した。
そこで漸く残る騎士四人は僕を、
「難敵だ」
と認めたらしい。
遅いけどね。
「我々に楯突くということはスノウ王に反逆するも同然だぞ!」
「ふぅん」
特に感銘を覚えたりはしない。
「だから何?」
心底言ってのける僕だった。
「とにかくそこの幼気な女の子を連れ去ろうとしてるんでしょ?」
「…………」
「恥を知れ」
「お前がな!」
氷の騎士の一人がこちらに間合いを詰める。
「遅い」
それが僕の率直な感想だ。
ザクリと薙いだ剣が騎士を分断する。
それだけでは終わらない。
「っ」
一瞬で二十七回。
超振動兼超高熱刀を振るう。
氷の結晶は蒸発して無へと変える。
「まだやるかい?」
刀で指して残る三騎に挑発する。
「我々に敗北はない」
アイスゴーレムの騎士はそう云った。
「お仕事ご苦労さん」
皮肉ってしまう。
それを聞き入れなかったのだろう。
「舐めるなぁ!」
三体の騎士が襲いかかる。
もっとも。
「十把一絡げ」
に相違はないのだけど。
「やれやれ」
嘆息して脱力する。
「死ね!」
三人の氷の騎士が僕に剣を振るう。
が、
「遅きに過ぎる」
僕はそんな言葉を吐いた。
超神速。
一瞬で騎士三体の胴を薙ぐ。
「がぁ!」
「げぁ!」
「ぐぁ!」
呻く氷の騎士たち。
「その状況でも生きていられるんだ……」
むしろ感嘆を送る僕だった。
「我らを倒したとて……」
「うるさい」
三騎のアイスゴーレムの負け惜しみを聞くに堪えず僕はとどめを刺した。
「さて」
僕は、
「大丈夫?」
と連れ去られそうになったおにゃのこに声をかけた。
「はぁ。ありがとうございます……」
状況についていけていないらしい少女はポカンとしていた。
そして、
「「「「「――っ!」」」」」
村人から喝采が上がった。
「え? 何?」
困惑する僕に、
「ようもやってくれた!」
「今日は宴じゃ!」
そんな村人の歓待を受けるのだった。