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雪の国15

 次の日。


「何でこうなった?」


 僕は自問していた。


 隣を歩いているのは、


「えへへぇ」


 朗らかな笑顔のツナデ。


 僕の腕に抱きついてご満足の様子。


「安いね。ツナデはさ」


「お兄様とデートできるのならそれがツナデの至福です故」


「というか何でこっちの世界に来たの?」


「意図的ではありませんよ?」


「知ってる」


 そもそもにして僕の異世界召喚が意図的ではなかったのだ。


 フォトンに都合の良い人間のみを闇魔術で召喚する。


 つまりツナデの召喚はフォトンにとって都合の良いことだと言える。


「それが何か?」


 と自問すれば、


「わかってるくせに」


 と自答してしまう。


「とりあえずお茶しませんか?」


「いいね」


 僕も健全な提案には肯定した。


「その後ホテルに行きましょう」


「デートにならないんじゃない?」


 ホテルに戻ればヒロインたちが待っている。


「いえ。休憩の出来るホテルです」


「…………」


 脱力する僕だった。


 何を以てツナデがそれほどの熱量を持つのか?


 永遠の課題だ。


 そして僕らは喫茶店に入る。


 ハーブティーとケーキのセットを頼んで改めて歓談した。


「お兄様はツナデのヒーローです」


「義兄様方に怒られるよ?」


「今は関係ないからいいじゃないですか」


「枷が外れたって所かな?」


「ですね」


 ツナデも否定はしなかった。


「ところで」


 ツナデはスッと目を細める。


「何故にフォトンとデートを?」


「プライバシーを尊重します」


「ですか」


「別段ツナデを蔑ろにしたわけじゃないよ?」


「お兄様はお優しいですね」


「そっかな?」


 自分は残酷なことをしている。


 僕にはそんな疑念が付き纏う。


 心を傷めているわけではないけども。


 それでも、


「ツナデは何で?」


 という疑念は尽きなかった。


 巫女によって世界は二つに分かたれた。


 神のいる世界。


 神のいない世界。


 あっちからこっちへ移る前。


 僕の味方はツナデだけだった。


「まぁ感謝はしてるよ」


 ソレだけ言ってお茶を飲む。


 と、そこに武器を構えた益荒男たちが喫茶店に突入してきて僕とツナデを包囲した。


「ん?」


 と僕。


「はぁ」


 とツナデ。


 剣刀槍戟を突きつけて、


「おとなしくしろ」


 と益荒男たちの頭領が代表して言った。


「僕たちが何か恨みを買うようなことをしましたか?」


「賞金首ということはしたのだろう?」


「あー……」


 すっかり忘れていた。


 それはツナデもそうだった。


 ツナデがオーラを広げたことを僕だけは感知していた。


 両手をティーテーブルの陰に隠してツナデは印を結ぶ。


「二人合わせて金貨四十枚だ。抵抗しないのなら生きたまま他国のギルドに突き出してやるが?」


「お優しいことで」


 僕が苦笑する。


 そして術名。


「火遁の術」


 ツナデがポツリと呟いた。


 次の瞬間、


「ぎゃああああっ!」


 とバウンティハンターたちは発火現象に苦しめられた。


 ツナデの遁術。


 火遁の術だ。


 本来は敵を足止めするための術であるがツナデおよび僕とイナフが使えば立派な攻撃の手段として確立する。


 幻想の炎に身を焼かれて全身に水膨れを作ってショックを受ける益荒男軍団ビクンビクン。


「南無三」


 と僕は印を切った。


 一応のところ殺してはいないけど、それにしてもこの手の人間は良く湧くなぁ。


 しかも結果も同一と来る。


 それで救われる連中だとは思っていなかったけど。


 まぁ相手が悪かった。


「あはは……はぁ」


 嘆息。


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