雪の国12
「で」
と僕は話を切り出した。
「リイナは何でレジスタンスに為ったの?」
そこはハッキリさせねばならなかった。
「…………」
言葉を探すリイナ。
ちなみに場所は高級ホテル。
その浴場。
広い浴場に僕らは浸かっていた。
「姉さんを取り戻すためです」
リイナは簡潔に言った。
「姉さん?」
首を傾げる僕ら一同。
「スノウ王の呪縛から解き放たなければなりません」
「呪縛?」
首を傾げる僕ら一同。
「スノウ王は雪の妖精です」
それは聞いた。
「そして凍結の王でもあります」
凍結……。
「レジスタンスはスノウ王を玉座から引きずり落とすことを目的としています」
レジスタンスね。
「ということはレジスタンスは組織的に雪の国に根を広げていると?」
「です」
間髪入れずに頷くリイナ。
「ということはそれ相応の悪と言うことかな? スノウ王は……」
「最悪です」
「例えば?」
「私の姉さんを愛でるために彫像にしました」
「ん?」
ちょっと意味がわからなかった。
「どゆこと?」
「スノウ王は人を愛でます」
「それは良いことじゃないの?」
少なくとも愛でるのなら。
「しかして方法論が間違っています」
「そこが分からない」
「スノウ王の悪は気に入った人間を氷の彫像として保管することにあるんです」
「あー……」
それだけで察せられる。
「つまりリイナのお姉さんもその被害者と?」
「はい」
頷くリイナ。
氷の彫像となりスノウ王のコレクションに加えられたリイナの姉。
なるほど。
そりゃ取り返したくもあろう。
「そこでフォトン様の出番ですよ」
興奮を抑えずリイナは言う。
「私が何か?」
「氷の彫像となった姉さんを助けられるのは無限復元をおいて他にありません」
「ですか」
フォトンの言は淡泊だった。
まぁ、
「そんなことのために無限復元になったわけじゃない」
ためこんなものだろう。
ていうか行くところ行くところで無限復元は何かに関わる。
デミウルゴスに呪われてでもいるのかな?
さて、
「そうすると……」
暗い未来しか見えない。
「王都には雪の妖精はいるよね?」
「うようよと」
さいでっか。
胃が痛くなる。
「つまり氷の彫像となったお姉さんを助けたいんだよね?」
「です」
「そのためにはフォトンの無限復元が必要と?」
「です」
「つまり雪の国そのものに喧嘩を売ると?」
「はい」
気後れせずリイナは頷いた。
「どうか力をお貸しください」
真摯に言葉を紡ぐリイナだった。
「まぁフォトンとフィリアとジャンヌがいれば勝ちきれる戦力ではあるけど……」
それっぱかりは本当だ。
というか一人一人が一個師団に匹敵する。
そう云う意味では、
「無謀だ」
とは言えない。
問題は、
「雪の国に喧嘩を売る必然性があるかどうか」
に尽きる。
そんな僕の意見を察したのだろう。
「お願いしますマサムネ」
水着姿のリイナがスススと寄ってくる。
僕に性的な魅惑をしながら、
「なんなら私の体を好きにして良いですから」
当然これはヒロインたちの反発を呼んだ。
「特に嬉しくはないかな」
僕は平常を保ってそう云った。
そこで漸くヒロインたちは安堵の吐息をつく。
「で、だ……」
僕は言う。
「要するにリイナのお姉さんを助ければいいんでしょ?」
「そう云うことになります」
「なら話は簡単だね」
サクリと言ってのける。
「とは?」
疑問を呈するリイナ。
対する僕は簡潔に言ってのけた。
「邪魔する奴らは皆殺し」
他に作戦はなかった。