雪の国10
「本当に誰も気づきませんね……」
おどおどしながら歩くリイナに、
「だから大丈夫だって言ったじゃん」
僕は言う。
「それで?」
とこれはリイナ以外の全員に。
「これからどうする?」
「とりあえずお茶にしましょ」
とフィリアが健全な提案。
それでいっか。
そんなわけで喫茶店へ。
僕らは銘々に注文して腰を落ち着ける。
ちなみに僕はコーヒーとチョコケーキ。
特に全力を出しているわけでもないけどオーラはカロリーを消費する。
であるため糖分摂取は不可欠だ。
ほろ苦いコーヒーとケーキを食べながら、
「一応人間がいる辺り別段妖精基準の国ってわけでもないんでしょ?」
ジャンヌに問うと、
「ええ、それは」
肯定される。
「市場もあるし、寒いことを除けば良い国じゃないの?」
今度はリイナに振る。
「表向きはですね」
裏がある……と。
ここでテロリズムを語って面倒事になるのもゴメンなのでこれ以上はやはり控えざるを得ないのだけど。
コーヒーを飲む。
「とりあえずホテルにチェックインしないとね」
「ですね」
とツナデ。
「ウーニャー!」
ウーニャーが尻尾ペシペシ。
「すみません」
とフォトンがウェイトレスさんを呼び止めた。
「何でしょうお客様」
「高級ホテルを幾つか教えて貰えませんか?」
「それでしたら……」
と幾つかの候補を挙げるウェイトレスさん。
コーヒーを飲みながら僕は言葉を右から左に。
そしてチョコケーキをアグリ。
「ありがとうございます」
とフォトンが言って紅茶を飲み出す。
「お兄様はやはり……」
ツナデの憂慮も分かる。
「しょうがないでしょ」
僕はコーヒーを飲みながら言った。
「どゆこと?」
とイナフ。
「マサムネちゃんがリイナちゃんと同室になるってことじゃない?」
「そうなのお兄ちゃん?」
「他に安パイが無いからね」
フォークでチョコケーキを崩す。
「う~」
リイナ以外の全員が唸った。
ウーニャーまで。
「ウーニャーは僕と同室だからいいでしょ」
「ウーニャー! パパと二人きりがいい!」
「我慢してね」
サクリと言ってのける。
「お兄様は厚顔すぎます!」
「唯一誇れる特技だね」
「マサムネ様は私にもっと寛容になるべきです!」
「フォトンにばっかりかまけるのもなぁ……」
「じゃあイナフと一緒しよ?」
「却下」
「お姉さんとは?」
「却下」
「マサムネ様は大人気ですね」
クスクスとジャンヌが笑った。
「趣味悪いよね」
本音だ。
「マサムネ様が格好良すぎるのがいけないんです!」
「そうです! お兄様は格好良すぎです!」
フォトンとツナデが強硬に主張した。
他のヒロインも、
「ふんふん」
と頷いている。
僕にしてみれば意味不明だ。
「何がそこまでさせるのさ?」
「お兄様の業です」
「それは……」
否定できないけど。
チョコケーキを崩す。
「でもさぁ」
反論は必要だろう。
「さほど持ち上げるものでも無いと思うんだけど……」
「無自覚は罪ですよ?」
「何回死ななきゃならないんだ……」
うんざりとしてしまう。
「ウーニャー。パパ格好良いよ?」
「恐悦至極」
本音じゃないけども。