雪の国09
「危ないところを助けて貰い感謝します」
雪だるまに襲われるという珍現象を起こしていた少女が頭を下げた。
少女は名を、
「リイナ」
というらしい。
こっちも自己紹介。
「ははぁ。それはまた大層な……」
頭から信じたわけではないようだけど、実力の程はさっき見せた。
フォトンが名乗ると、
「無限復元……セブンゾールのフォトン様ですか!?」
リイナは食いついた。
「本当に有名なんだねフォトン」
「恐縮です」
声には疲労が乗っていた。
まぁ大陸に知らぬ者の無い(らしい)ビッグネーム。
「光の国のフォトン」
とはそう言う存在らしい。
ところでソリは今以てリイナを乗せて次の集落へ向かっている。
リイナ曰く都市らしい。
「困ります!」
とはリイナの言。
「とは云われても」
とは僕の言。
薬効煙を吸いながら。
「何かしら不都合が?」
「指名手配中です」
ははぁ。
「何の罪?」
「いわゆる一つの……」
むずむずと唇が動く。
「国家反逆罪で……」
「テロリスト?」
「レジスタンスと言ってください」
あんまり変わらない気もするんだども。
まぁ良かれ。
薬効煙をプカプカ。
「かと言って吹雪の中で野宿もないでしょ?」
「う……」
とリイナ。
「ということは……」
僕の言葉にツナデが続いた。
「ツナデたちはテロリストを助けたことになりますね」
だよねぇ。
ちょっと深刻かも。
あまり萎縮することでもないけど。
「さっきの雪だるまたちは?」
「雪の妖精です」
「…………」
妖精と言うにはシュールな容姿だったけど。
「国家反逆罪の犯人を追い詰めていたってことはアレが雪の国の警察なの?」
「というか軍隊です」
「…………」
僕はジャンヌに視線を振った。
いわゆる、
「説明お願い」
というソレだ。
「雪の国を支配しているスノウ王が雪の妖精なんですよ」
「そなの?」
「ええ」
コックリ。
ジャンヌは頷いた。
「そして自身のしもべとして無尽蔵に雪の妖精を創り上げることが出来ます」
「ジャンヌお姉ちゃん」
とイナフ。
「それは雪の妖精の無尽蔵な軍隊が雪の国にはあるってこと?」
「そう捉えても構いません」
「ふむ……」
フーッと煙を吐く。
思考がクリアになっていく。
「都市には検問がありますよ」
「まぁ逮捕されるのは僕らじゃないしね」
まったくもって他人事だ。
「私はどうすれば?」
「変化の術」
「?」
ってなるよね。
「僕らは幻術使いだから」
「幻術……」
「だからリイナを別人に見せることも可能だよ?」
「本当に?」
「信じないってんなら別に構わないけど」
「信じます信じます」
よろしい。
「面倒事とはごめんだが……」
とは御者さん。
気持ちは分かる。
「まぁ多生の縁ということで」
「本当にそんな魔法みたいなことが出来るのか?」
魔術のある世界の住人に言われるのは……なんだかな。
そんなこんなでソリは進む。
さすがにリイナが襲われた場所から都市は離れていなかった。
着くと同時に検問。
あっさりとスルーする僕ら。
遁術は便利ね。