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雪の国08

 村に滞在すること数日。


 しばらく厄介になった後、次の集落に向かうことになった。


 トナカイのソリ。


 暖房結界はソリの上だけ。


 吹雪はトライデントでおさめて。


 機嫌良く御者さんは運んでくれた。


 僕は定期的にオーラを展開して危険を察知するよう努めていた。


 世界樹の実を囓りながら。


 なんといってもオーラはカロリーを消費する。


 であるため世界樹の実は有益である。


 それからジャンヌの炎で炙った干し肉をもむもむ。


「便利な技ですなぁ」


 御者さんは苦笑と驚異を同居させた声音でそう云った。


「一国と戦いきれる戦力ですよ」


 僕も苦笑する。


「くは」


 と御者さん。


「心底おんしらには敵いませんな」


 くっくと笑う。


「ウーニャー陛下におかれては堕天使を一撃の下で消滅させましたし……」


「ウーニャー。あれくらいなら誰にも出来るよ?」


「…………」


 出来るわけがない。


 が、つっこむのは野暮だろう。


 僕は薬効煙に火を点けた。


 プカプカ。


 適時オーラを展開すると、


「?」


 幾つかの影を捉えた。


 一人は女の子。


 オーラで把握するに美少女だ。


 幼さは残っているものの少女と呼んでいい外見だ。


 あくまでオーラに因れば……だけど。


 その少女は不自然な物体の集団に追われていた。


「あー……」


 何と云ったものか。


 球体が二つ上下にくっついたシルエット。


 頭部にバケツ。


 骨のような腕。


 足は無し。


 しかし器用に動いている。


 と、これだけなら分からないだろうからぶっちゃけると、


『雪だるま』


 に相当する珍現象が少女を襲っていた。


「…………」


 シュールに過ぎる。


 雪だるまが動いてる。


 なおかつ少女を襲っている。


 少女は抵抗していたけど、


「善戦虚しく」


 といったところだった。


「はぁ」


 ため息をつく。


「どうかされましたか?」


 ツナデが心配げに聞いてくる。


「面倒事」


 そして僕は印を結んで術名を発す。


「火遁の術」


 雪だるまたちが炎に包まれる。


 しかして痛痒は覚えなかったらしい。


 自らを取り巻く炎を見やって困惑するのが関の山。


 要するに遁術は利かないと云うことだ。


 じゃあどうするかと問われれば一つしかない。


 僕は薬効煙を吸って吐くと、


「闇を以て命ず」


 世界宣言を行なった。


 当然、想像創造も忘れずに。


「空間破却」


 空間破壊性結果論転移。


 空間そのものを崩して結果的に転移する魔術だ。


 此度はトナカイのソリと、その乗者もろとも。


 雪だるまに襲われている少女の元へと瞬間転移。



「っ?」


 と僕以外の一同。


 いきなり跳んだり現れたり。


 そりゃまぁ訝しげにもなる。


「ジャンヌ」


 と僕は云った。


「……何でしょう?」


 困惑から脱しきれていないジャンヌが固い声で答える。


「雪だるまを燃やして」


「構いませんが」


 そしてジャンヌの手の平に炎が生まれると、


「待て――」


 待たん。


 ジャンヌは灼熱の業火で雪だるまたちを蒸発させた。


「え?」


 と少女。


 さもありなん。


 いきなりトナカイのソリが現れたと思ったら雪だるまたちを駆逐したのだ。


 僕以外の人間は現状についていけていなかった。


 いいんだけどさ。


 こんなことは今更だ。


 というかジャンヌの能力は本当に良い買い物だね。


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