雪の国03
とりあえず今日はジャンヌと同室。
「えへへ。照れますね」
ジャンヌは恐縮していた。
さもあらんけどこっちとしては圧迫だ。
「これで私も大人の仲間入りと……」
「先回りして云えば抱かないよ?」
「ふえ?」
なんで疑問系よ?
「私じゃ駄目ですか?」
「駄目です」
容赦なく言葉を振り下ろす。
「他の女性とは致してるのに?」
「致してござんせん」
「…………」
ジト目になるジャンヌだった。
赤い瞳が、
「嘘つけ」
と雄弁に語っている。
嘘じゃ無いんだけどなぁ。
とりま、
「童貞ですけん」
事実を伝える。
「童貞なんですか?」
「童貞なんです」
「もしかして非処女ですか?」
「処女です」
なんつー不名誉な懐疑を……。
「男の方が好きとか……」
だから不名誉っ。
「普通に女の子が好きです。おっぱいとか性器とか」
「抱いてくれていいですよ?」
「そっちこそ非処女?」
「いえいえ」
本当かなぁ?
今度は僕がジト目になった。
「元よりアンチテーゼが第一義でしたし」
パッと両手を広げての弁明。
「というか他の方々もマサムネ様との関係を望んでいるのでは?」
「……まぁね」
「何故戴かないので?」
「処女主義をこじらせていますので」
嘘だ。
こっちだって健全な青少年。
交合だってしたいに決まっている。
それでも、
「答えも出さないまま流れでやっちまうのもどうかな」
という案件だ。
「私は別に気にしませんよ?」
とは云われても。
「特に関係をもったからって拘束することはしませんし、他の女性とやっても機嫌を損ねることもありませんし」
「そういうのをビッチっていうんだよ」
「いいじゃないですか。それで」
「…………」
何が良いんだろう。
「処女ですから性病の心配も無いですし都合が良いと思うのですけど……」
「気が向いたらね」
「こじらせてますね」
「先にそう云ったでしょ」
「そーですけどー」
納得できるかは別問題……と。
いいんだけどさ。
僕は魔術で薬効煙をつくると、くわえて火を点けた。
煙を吸って吐く。
ジャンヌの片眉が跳ねる。
「体に悪いですよ」
「ご心配なく」
「フォトン様がいるから?」
「んにゃ」
まぁそれもあろうけど。
「これは薬だから」
「麻薬?」
「単なる精神安定剤」
フーッと煙を吐く。
「薬効煙と云いましたね?」
「んだんだ」
「どこで覚えたんですか?」
「あー……」
何と説明したモノか。
「家庭の事情」
他に言葉は選べなかった。
プカプカ。
「薬害は無いんですか?」
「ないね」
薬草とハーブを混在させて紙巻きタバコ状にしただけの代物だ。
「精神的依存症は多少なりともあるけど、それくらいかな?」
そういうことになる。
「ふむ」
とジャンヌは納得したらしい。
「私にも一本」
「あいあい」
薬効煙を渡す。
ジャンヌはくわえて自身の浄化の炎で火を点ける。
便利な野郎だ。
スーッと吸ってフーッと吐く。
「独特の味ですね」
「まぁ薬ですから」
僕らはそうやってプカプカ薬効煙を吸っていた。
眠気が来るまで。