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雪の国01

「すごい吹雪ですねお兄様」


 とは妹の言葉。


「だね」


 と僕。


 視界が塞がれて迷いそうだ。


 ここは渚の国の北にある雪の国。


 文字通りの雪の国。


 万年雪の支配する国だ。


 一応のところここは地球で地軸が傾いており太陽の周りを回っているため四季があるはずなんだけど雪の国にはその常識は通用しないとのこと。


 一年中吹雪に覆われ雪が積もり寒風吹きすさぶ極寒の地らしい。


「ジャンヌ曰く」


 と注釈がつくけど。


「寒くはないけど何だかなぁ」


 一応雪の国に精通した国境沿いの商人に話を聞くと、


「雪の国のまつりごとの一環において一定距離で目印が設置されている」


 とのことらしいけど、正直なところ吹雪があまりに強烈すぎて視覚が役に立ってくれない。


 一応、


「ちゃんと道を進めば一日で最初の村には辿り着ける」


 とは言われたけど。


 この猛吹雪の中で野宿することは自殺行為だ。


 どうやって国が運営されてるんでしょう?


 疑問に思ってしまう。


 まぁ視界が悪くても僕がオーラを広げて雪の国の為政者さんが設置してくれた目印を把握できるため遭難することはないんだけど、オーラを扱えない一般的な旅人ならば死んでもおかしくない天嶮の地だ。


「フィリアとジャンヌがいてくれて良かったよ」


 僕は二人に感謝した。


「お姉さんはご褒美を所望するわ」


「皆様の役に立てているならば喜ばしいです」


 二人は軽口を叩く。


 ちなみに、


「まぁ便利ではあるよね」


 とイナフが言うとおり便利ではあるのだ。


 水を操るフィリア。


 火を操るジャンヌ。


 フィリアは猛吹雪の雪をトライデントで干渉して弾く。


 ジャンヌは熱を生みだし暖房結界(僕が命名した)を展開して一定領域内の外気温を春さながらに変える。


 想像創造も世界宣言も無しに火を操るのがジャンヌの特性だ。


 そこに異世界の知識である僕とツナデの講釈が加わってジャンヌは燃焼というモノがどういった現象かを理解した。


 その上で分子運動に対してアクティブな干渉を行いジャンヌを中心に五メートル圏内の暖房結果を張る。


 結果としてジャンヌから五メートル圏内だけは冷気を寄せ付けず暖かな空気が保証されている。


 国境沿いの商人はトナカイの毛皮のコートをぼったくり価格で売りつけようとしてきたためちょいとお仕置きをした。


 結果として従順になって雪の国における最初の村への道筋とコンパスを譲ってくれたのだ。


 コンパスの指す北へと向かいながらオーラで目印を確認……進む。


 僕らの服装は喪服だったりドレスだったり。


 とても吹雪の中で有り得る格好ではないけど、先述したようにフィリアとジャンヌの貢献で一部たりとも雪も冷気も僕らを蝕むこと能わず。


 ジャンヌの暖房結界は積雪を溶かして道を露わにするため都合が良いと云うこともある。


「ここまで視界の悪い猛吹雪の真っ只中でスーツ姿というのも何かしら違和感が……」


 とはツナデの言。


「ジャンヌはいい買い物だったね」


 イナフが苦笑する。


「恐縮です」


 とジャンヌ。


「ところで」


 とこれは僕。


「やっぱりこんな万年雪の国だと交通手段は無いのかにゃ?」


「トナカイとソリはあると聞きますが」


 なるほど。


 ジャンヌの補足に納得してしまう。


 たしかに雪の国に相応しい移送手段だ。


「サンタクロースでも出てきそうな勢いだね」


 とりあえず歩行かちで進む僕ら。


 ていうかここまでの猛吹雪が支配する領域でどうやって市場は流動性を保っているのか不思議な気持ちである。


 フィリアが吹雪を弾く。


 ジャンヌが冷気を弾く。


 そうやって一歩一歩。


 雪月花を楽しむのも日の本の国出身の性なのだろうけど、こんなに盛り盛りの雪を前にしたら有り難さの欠片も無い。


 偏に、


「面倒くさい」


 で一蹴できる。


「そういえば川は無いのかな?」


 釣りが出来るならそれに越したことは無いのだけど……。


 僕は薬効煙に火を点けながら言った。


 煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 ほにゃら。


「凍結しているのではないかと」


「あー……」


 まぁそうだよね。


「ワカサギ釣りとか出来ないかな?」


「この異世界にワカサギがいるんでしょうか……」


 ツナデも首をひねっていた。


 ともあれ駄弁りながら前へと進む。


 日も暮れようとしたところで最初の村に辿り着いたのは……必然だったろう。


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