渚の国28
そんなわけで日も落ちたし今日は廃城に泊まることになった。
温泉も出るらしく順番に入ることにした。
僕は最後。
「乱入してきた痴女は嫌いになるから」
そうヒロインたちに牽制した後、
「ふい」
僕はウーニャーと一緒にお風呂に入った。
とは云っても温泉の湯と川の水を混ぜて作った簡易な風呂であるため温度は少し温め。
「ウーニャー!」
人型のウーニャーが僕に抱きついてきた。
「ウーニャーは可愛いね」
「ウーニャー!」
「はいはい」
ウーニャーの虹色の髪を撫でる。
「ウーニャー! パパ大好き!」
「恐悦至極」
そんなやりとりをしていると、
「マサムネ様はロリコンだったのですか?」
赤い声がそんな不名誉なことを言った。
「…………」
沈黙。
それから声のした方を見やる。
裸体のジャンヌがいた。
赤い髪に赤い瞳。
乳房は豊満。
お腹は引っ込んでる。
お尻が突き出して。
綺麗なボディラインが黄金比で曲線を描いていた。
「…………」
しばしジャンヌの裸体に見とれた後、
「痴女め」
と罵る僕。
「まぁまぁ」
とジャンヌ。
気安く僕の隣に腰を落ち着ける。
「ふい」
と温泉に浸かるジャンヌ。
それからスススと僕に近寄って身を近づける。
「嫌いになるよ?」
「それは困りますけど……最初くらいは良いでしょう?」
「何が良いのかわかんないんだけど……」
とまれ、
「何がしたいの?」
赤い瞳を覗き込む。
「少し湯が温いですね。暖めましょう」
そう云って炎の特異体質を駆使するジャンヌだった。
炎で一気に湯の温度を上げる。
それについては絶句の一言。
「便利だね」
「ええ、まぁ」
特に謙遜にも値しないらしい。
「で」
ジャンヌは赤い瞳で僕を見つめる。
「マサムネ様は私に何か言いたいことがお有りでは?」
僕の腕に抱きついて豊満な胸を押し付ける。
いい加減にしてほしいけど、ともあれ、
「アンチテーゼって何?」
「どういう意味です?」
じゃあ質問を変えよう。
「ジャンヌは何年前に生まれたの?」
「えーと……あれ?」
自覚無し、と。
「あれ? あら?」
ジャンヌは困惑していた。
「誰に育てられたの。誰に教養を授けられたの?」
「誰でしょう?」
そんなこったろうとは思ったけど。
「気づけば私は私でした」
「アンチテーゼだね」
「そうです」
「デッド王に対する」
「そうです」
つまり神為的な存在だ。
不老不死に対するカウンターパワー。
デミウルゴスも粋なことをする。
それについて語ると、
「では私のアイデンティティは偽物と?」
「事実は事実としてあるんだから否定する要素はないよ?」
「それを云うなら渚の国の民も同じではないでしょうか?」
「だろうね」
特に否定することでもない。
実際のところ五十歩百歩だ。
不老不死も。
浄化の炎も。
基本的に魂を信仰していない僕にとっては観測したモノこそが現実。
であるから、
「勝手にすれば」
という意見が出てくる。
ジャンヌに云ったりはしないけど。
「マサムネ様も手伝ってくださいますよね」
ムニュウと豊満な胸を押し付けながらジャンヌが僕を籠絡せしめんとする。
「ウーニャー!」
ウーニャーが威嚇した。
「パパを惑わせないで!」
惑わされてはいないんだけど……。
言って詮方なし……か。
「さて……」
どうしたものか。