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渚の国27

「この世には真と偽があります」


 そんなジャンヌの言葉。


「そして人間は例外を除けば真の魂を得て生まれます」


「…………」


 僕はツナデを視線で牽制した。


「気持ちは分かるけど最後まで話を聞こう」


 と。


「対する渚の国の民は偽の魂を与えられて生きています」


「それはどういう意味で?」


「つまり真の魂を消し去った後、魂の情報だけをデスエンロールメントに記録して偽の魂に複写。再構築して不老不死の国民を創り上げます」


「国民が総じて美少女なのは?」


「魂に一定の干渉を行なって情報を変質させることで再構築時に外見だけ美少女に変えるのです」


「そうやってハーレムを作る訳だね?」


「ですね」


 頭が悪いにも程がある。


「それでデスエンロールメントに登録された魂の情報ごと対象を殺すことが出来るのが……唯一君の炎だけってこと?」


「ええ」


「ふぅむ……」


 さて、面倒なことになってきたぞ。


「そもそもデッド王のソレは悪いことなの?」


「いいえ。ただ気にくわないと云うだけです」


 ふぅん?


 チラと赤い瞳に覗いた光を僕は見逃さなかった。


 それがどういう意味を持つのか。


 少なくとも考えて意味あるのかも疑問だ。


「でも国民は大層デッド王に肯定的だったけど」


「騙されてるんです」


「はあ」


 と僕ら一同。


「どうやって?」


 と問うたのはイナフ。


 対するジャンヌは、


「ソウルドラッグに因ってです」


 ソウルドラッグ……。


「ってなぁに? ジャンヌちゃん……」


 フィリアが聞く。


「魂に根ざした麻薬……正確には麻薬ではないのですけど偽の魂に植え込まれた機能の一つです」


「ウーニャー……?」


 まぁウーニャーが理解できるとも思えないけど。


「ソウルドラッグは魂に根付いた毒です」


 ジャンヌは蕩々と言葉を続ける。


「意識に酩酊感と多幸感を植え付けて国民を籠絡します」


「要するに生きてるだけでハッピーにすると?」


「死んでますが」


 そうでしたね。


「じゃあジャンヌが僕らの前に現れたのは……」


「ええ、先にも言ったように死者を増やしたくない。それだけです」


「にゃるほどね」


 邪眼。


 デスエンロールメント。


 偽の魂。


 ソウルドラッグ。


 事前に聞いていなければ対処のしようも無かったろう。


 フォトンを除いて。


「で、暗殺の話に戻るんだけど……」


「でしたね」


「ジャンヌは渚の国の現状を憂えているんだよね?」


「はい」


「そのためにはデッド王の暗殺が必要と……」


「はい」


「で、そのために」


 チラリとフォトンを見やる。


「?」


 キョトンとするフォトン。


「その通りです」


「どういうことです」


 これはフォトン。


「つまり無限復元でジャンヌを補助して……ジャンヌが浄化の炎でデッド王を焼殺すると……そういうことではお兄様?」


「だろうね」


「その通りです」


 ジャンヌも頷いた。


「しかし魂ねぇ」


「まったくです」


 僕とツナデは嘆息した。


 さもあらん。


「何か問題が?」


「ありまくり」


「ですね」


 コックリ頷く僕ら兄妹。


「?」


 とこっちの世界の住人は理解していなかった。


 別にとくとくと語ることでもないけど。


 それにデミウルゴスが有り得ている以上、もしかしたら生命の定義も違っているのかも知れないし。


「じゃあとりあえず」


 と僕。


「デッド王を暗殺しますか」


「いいんですか?」


 困惑するジャンヌだけど今更だ。


「そっちの方が都合良いんでしょ?」


「そうですけど……」


 なら決まりだ。


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