渚の国25
隠れ家。
そこはそう呼ばれる場所だった。
要するに暫定テロリストであるジャンヌの本拠地。
馬車?
使い物にならなくなった。
何故かと云うとジャンヌが馬を解体したから。
持っていた刃物で鮮やかに仕留めると、馬肉へと変質させうる。
その手際は、
「見事」
の一言だ。
それからジャンヌは僕らを率いて隠れ家(古びた廃城だ)に行くと、
「まぁくつろいでください」
と厚かましい温情を送る。
「…………」
コレでどうリラックスしろというのか。
今にもポルターガイストが起こりそうな廃城で。
ちなみに馬肉はジャンヌの熾した火で炙られている。
「あの……お兄様……?」
「なぁに?」
ツナデは困惑していた。
それは僕ら全員の心象だけど。
「いいんですか?」
「いいんじゃない?」
サクリと返す。
そして馬肉を食べて一息つく。
「けふ」
控えめなゲップ。
腹はくちくなった。
「で?」
とこれは僕の言葉。
僕はジャンヌを見据えた。
「ジャンヌ……でいいんだよね?」
「はい」
「何で僕らを襲撃したの?」
「助けるためです」
「ん?」
と僕。
「は?」
「ひ?」
「ふ?」
「へ?」
「ほ?」
とヒロインたち。
「テロリストジャンヌ……」
醜女のドーリがそんなことを言った。
「知ってるの?」
とイナフ。
「ええ」
ドーリはそう答えた。
「浄化の炎で不老不死の国民を死に昇華させる第一級犯罪者です……っ」
僕はチラとジャンヌを見やる。
「本当なの?」
「ええ」
特に気後れ無くジャンヌは頷いた。
「そういえば世界宣言も無しに魔術を行使していたね」
そればっかりは驚愕せざるを得ない。
「私はカウンターですから」
緋色の瞳に決意を込めてジャンヌは言う。
「もし」
とツナデ。
「もしかして救済のジャンヌ=ダルクですか?」
「ジャンヌ=ダルク?」
ジャンヌは首を傾げた。
まぁそう云うこともあるだろう。
この世界は巫女が観測して創った世界。
であればジャンヌ=ダルクくらいは再現可能だろう。
僕は馬肉を噛む。
「で?」
との言の葉。
「ジャンヌは何で僕らを此処に呼んだの?」
「不幸が広がることを阻止したいがためです」
「…………」
意味わかんないんだけど……。
「ええと……」
とジャンヌは言葉を探した。
「んー」
とか、
「む~」
とか悩んだ後、
「そもそもデッド王について何処まで知っていますか?」
「まったく」
「全然」
「ですね」
「一部たりとも」
「ウーニャー!」
「知らないわねぇ」
危機感の足りない僕らだった。
「結論だけ述べるなら……」
ジャンヌは言った。
「デッド王は死者を増やしているんです」
「……はぁ」
頷いたのは僕。
他の面々も似たような反応だ。
一人、
「…………」
醜女のドーリだけがむず痒い表情を見せていたけど。
僕は薬効煙に火を点けて言った。
「つまりどゆこと?」