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渚の国24

 んだでば、


「護送の馬車、お借りします」


 フォトンがそう言ってクリス卿に一礼した。


「道中お気をつけて」


 ニコリと笑ってクリス卿は見送ってくれた。


 ちなみに豪奢な馬車に御者は美少女。


 当然不老不死なのだろう。


 一応護衛らしい。


 攻撃的な装備をしていた。


 護衛が御者一人しかいないのはこっちからの提案だ。


 そもそもにして護衛がいらないのだからしょうがない。


 それにしても、


「デッド王……ねぇ?」


 自身の結界内だけで不老不死を体現。


 国民を美少女に変える、と。


「ウーニャー……」


 僕の思案にウーニャーも悩んで見せた。


 ヒロインたちは毎度毎度のトランプをしていた。


 僕は必要最低限のオーラを展開。


 索敵をしている。


 カロリーを消費するけど一応やっておく方が安全だ。


 別段ロケットランチャーで襲撃されない限りどうとでも為る案件でも……またあるのだけど。


 パカラパカラと馬が走る。


 適切な速度で。


 と、


「ふむ?」


 オーラが人影を捉えた。


 馬車の行く道の、その延長線上。


 的確に情報を得る。


 美少女だった。


 外見だけなら僕の道連れにも匹敵する。


 豪奢なドレスにところどころ金属で装甲を作っている。


 女性の騎士なのだろうか?


 そんなことを思っていると、


「止まりなさい!」


 と朗々たる声が響いた。


 心の琴線に触れる澄み切った声。


 馬車が止まる。


 御者が唸る。


「ジャンヌ……!」


 ジャンヌ?


「テロリスト風情が何しに現れた!」


 御者は帯びていた剣を抜き放つ。


 対する美少女……ジャンヌも気迫で答える。


「また死者を増やすつもりですか!」


 死者?


 増やす?


「デッド王の恩恵を無に還す悪行。ここで絶ってみせましょう!」


 そう云うと御者は剣を構えてジャンヌと呼ばれる少女に襲いかかった。


 僕はそれを目視した。


 他の面々もトランプより異常事態が気になったか後追いする。


 御者の剣の冴えは中々のモノだ。


 僕らには遠く及ばないけど。


 対するジャンヌは、


「――っ!」


 手から炎を生み出すとそれを御者目掛けて放った。


 圧倒的な熱の奔流。


 灼熱の業火と呼んで大げさでない熱量。


 もはやドラゴンのブレスに相当しそうな勢いである。


 が、そんな炎の奔流は馬車までは届かなかった。


 御者のみを焼き尽くして終わった。


 それっきり。


 不老不死であるはずの御者は再生さえしなかった。


「ほう」


 と僕。


 世界宣言も無しに不条理な炎を生みだし不死の御者を滅して見せたのだ。


 女の子一人で盗賊もあるまい。


 オーラを最大限広げてみても他に隠れている不穏分子は存在しない。


 それからジャンヌは僕らに声をかけた。


「無事ですか?」


「何を以て無事とするかによるね」


 代表として僕が答えた。


「はう!」


 とジャンヌは赤面した。


 ルビーを溶かして染め上げたような赤い髪に同色の瞳。


 そして頬まで赤くした。


「はて?」


 と僕は首を傾げる。


「これだからマサムネ様は……」


「お兄様は……」


「お兄ちゃんは……」


「パパは……」


「マサムネちゃんは……」


 呆れ果てたようなヒロインズ。


「何さ?」


 ジト目で見られればいい気はしない。


「例外を除けば美少女揃いですね……。もしかして不老不死の体現者ですか?」


「違います」


 やはり代表して僕が答えた。


「ですか」


 ジャンヌは納得したらしい。


「では少し付き合って貰えませんか?」


「はあ」


 僕は頷いた。


 特に反論も出なかった。


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