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渚の国23

 次の日。


「むにゃあ」


 イナフが僕に抱きついていた。


 ベッドの中で。


 ちなみに下着姿。


「…………」


 頬をねじる。


「うぁいたぁ!」


 イナフが起きた。


「ご機嫌いかが?」


「なんて起こし方するのさ!」


「イナフが悪い」


 それは譲れない。


「ちょっとくらいイナフにもさぁ」


「サービスシーンはいらないよ」


「むぅ」


 ふくれっ面になるイナフ。


「だいたいその肉付きなら下着いらないでしょ?」


「じゃあ全裸で一緒に寝ようね」


「永眠したいらしいね」


「お兄ちゃん」


「なぁに?」


「ゲイじゃないよね?」


「まぁ非難するつもりはないけど僕の性癖ではないね」


「でも女の子に迫られても平然としてるし」


「処女厨です故」


 喪服を纏って僕は答えた。


「処女だよ!」


「うん。まぁ。大切にしてね」


「なんでよぅ……」


「一回きりのジョーカーですけん」


 悪戯っぽく僕は笑った。


「お兄ちゃんの意地悪」


「心地良いね」


 飄々と。


 元より応じるはずもないので気楽なモノだ。


 そんなこんなで朝食。


 朝から贅をこらした食事は勘弁なので簡単な料理を注文した。


 パンとバター……サラダにスープ。


 その程度だ。


 朝食を取り終えると女子たちはトランプに興じた。


 クリス卿にトランプの遊び方を経験で覚えて貰うためだ。


 僕は、


「木を以て命ず。薬効煙」


 と薬効煙を生みだしくわえて、


「火を以て命ず。ファイヤー」


 と火を点ける。


 プカプカと薬効煙を吸って外に出た。


 手入れの行き届いている庭だ。


「大したものだね」


 煙を吐いて感嘆とすると、


「ウーニャー!」


 といつも通り僕の頭に乗っかっているウーニャーが尻尾ペシペシ。


「貴族って偉いの?」


「形式上ね」


「ウーニャー……あんまり一般人との違いがわかんないんだけど……」


「ウーニャーだって貴族どころか王様じゃないか」


まつりごと……放り出してるけど……」


「まぁその辺は気にしなくて良くない?」


 薬効煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


「七大竜王たちがよろしくやってくれてるだろうし」


 何より、


「ウーニャーは僕のバーサスだし」


「ウーニャー!」


 尻尾ペシペシ。


「パパは竜騎士!」


「さいです」


「でもフォトンともバーサス……」


「時間軸でなら向こうが先だけどね」


「ウーニャー……」


 あ。


 へこませてしまった。


「まぁ愛らしさで言えばウーニャーが一番だよ……」


「じゃあパパはウーニャーが好き?」


「保父的な意味ではね」


 情欲的になら犯罪だ。


 こっちの世界において警察力の関知するところでも無かろうけど僕だって常識は弁えてるのだ。


 散々人様を傷つけておいて、


「何を言う」


 と問われれば口を閉ざすしかないけど。


「えへへぇ」


 とウーニャー。


「何が面白いの?」


 薬効煙をプカプカ。


 管理された庭を歩く。


「ウーニャーはパパに愛されてるなって」


「うん。好きよ? 愛娘」


 この程度のリップサービスは僕でも出来る。


「ウーニャー!」


 一直線に僕の言葉を真に受けるウーニャーは愛らしかった。


「パパ大好き!」


「恐縮だね」


 肩をすくめる。


 煙をフーッと吐く。


「ずっとウーニャーの傍に居てね?」


 命ある限り……ね。


 さすがにそれは言葉に出来なかった。


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