渚の国22
さて、
「ほほう。面白いですな」
クリス卿は女子たちと共に(クリス卿も美少女だけど)トランプに興じていた。
この異世界においてトランプがだいたい何処でも通じる娯楽なのは……既に承知の通り。
クリス卿も例外ではない。
なので魔術でトランプを作って一つ進呈した。
遊び方も幾つかメモって差し出す。
ポーカー。
ブラックジャック。
大貧民。
七並べ。
神経衰弱。
セブンブリッジ。
その他諸々。
僕はチョコレートを飲みながらウーニャーを頭に乗せてボーッとしていた。
一くさりトランプの遊びをやり終えると、
「それで?」
とフォトン。
「何用で呼び出したんです?」
「デッド陛下から命を受けまして」
「デッド王……」
それが渚の国の王なのだろう。
「セブンゾール……無限復元のフォトン様にお目通り願いたいと」
「私も偉くなったモノですね」
口をへの字に歪めて言うことでも無いと思う。
さて、
「何ゆえ?」
「それは私にも分かりかねます」
「でしょうね」
「であるためフォトン様たちには王都に向かっていただきます。当然馬車と護衛をお連れください。不自由はさせません」
「まぁ……こっちとしても向こうに用があったのでそれは良いのですけど不老不死は今更ですよ?」
「でしょうね」
クリス卿は苦笑した。
無限復元の能力は大陸中に知れ渡っているということらしい。
クリス卿が知っていても不思議ではない。
「とりあえず今日はここでおくつろぎください。精一杯もてなしをさせてもらいます」
「恐縮です」
他に言い様もないだろう。
*
「それにしてもデッド王の能力は何なんだろ?」
僕は逆立ちしたまま腕立て伏せをしていた。
その隣で同様のイナフ。
今日同室しているのは大貧民で勝ったイナフであった。
ちなみにウーニャーは僕管轄なので自動的に同室。
今更だけどね。
「不老不死を与える能力じゃないんですか?」
「ん~。まぁそなんだけど」
それではまるで、
「形の国と宿業が一緒だ」
と言わざるを得ない。
あっちはコミュ障ぼっちのドール王の自慰によって国が成り立っていたけど、こっちのデッド王は何ゆえ国民に不死を与えるのか?
考えて出る答えでもないけど。
トレーニングを終えると僕とイナフはお風呂に入る。
当然水着着用。
そうするのがもはや習慣となっている。
「デッド王はともあれ」
とはイナフ。
身を清めて入浴。
後にスススと僕に詰め寄る。
「お兄ちゃんはフォトンお姉ちゃんとツナデお姉ちゃんのどっちが好きなの?」
「今のところ情が移っているのツナデの方かな?」
「ふぅん?」
と納得いかなげなイナフだった。
「イナフならお兄ちゃんが年を取っても若々しくいられるよ?」
「フォトンもそうでしょ」
「あいた……」
「というか僕はそこまでのモノでは無いと思うんだけど……」
ジト目。
「ううん」
とイナフは首を振る。
「お兄ちゃんは魅力的」
「恐縮だ」
「やっぱりロリボディは範疇外?」
「まぁ絵面的に厳しいよね」
「気にしなくて良いんだよ?」
「そっちがそうでもこっちがね」
「お兄ちゃんはもっとガツガツして良いと思うの」
「畏れ多いよ」
八割嘘だけど。
「生殺しだよ」
「いつでも見切ってくれて構わないからね」
ニッコリ。
「ありえない」
コンマ単位で返された。
「イナフは可愛いなぁ」
濡れた金髪を撫でてあげた。
「えへへ」
とイナフは笑う。
さすがに半分エルフの血を引いているだけあって魅力的な笑顔だった。
「お兄ちゃん」
と慕ってくれるのも好印象。
義理の妹が出来たみたい。
年齢的にはイナフが上なんだけど……。