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渚の国19

 とりあえず今日の疲れを取るべく(とは言っても僕はこの後鍛錬に励むのだけど)ホテルに泊まった。


 それも大都市最高級の。


 別に豪華なホテルに泊まった程度で揺らぐ資産量でもない。




 ※フォトンとツナデの財布が……である。




 僕はヒモだ。


 それからもう一つ。


 高級ホテルならば暗殺や襲撃の危険が無い。


 ホテルがサービス業……即ち第三次産業であるため、高級ホテルとはブランド商売なのである。


 賞金首であろうと丁重にもてなすのが流儀。


 むしろ目先の懸賞金に目がくらんで僕らを害したらホテルとしての信用がガタ落ちする。


 なので大物賞金首(例えば僕らとか)相手には必要以上に気を遣われる。


 仮にホテル側に責任がなくとも、


「客を害された」


 という傷がつけば金看板も地に堕ちる。


 であるため最上級のスイートルームに泊まれば安心してサービスを受けられるのだ。


 そんなわけで、


「珍しいわね」


 フィリアの声を頭上で聞きながら僕は腕立て伏せをしていた。


 汗ダラダラ。


 筋肉ムチムチ。


 フィリアが僕の背中に乗って腕立て伏せの難易度を上げているのだ。


「毎度思うけどマサムネちゃんは鍛えすぎよ?」


 フィリアの声には困っているような音が含まれていた。


「まぁ業だから」


 僕は率直に返す。


「業って……」


「いつでも最上を以て臨むべし。それが家訓だから」


 腕立て伏せが四桁に突入した。


「ツナデちゃんやイナフちゃんもそうなの?」


「イナフの方は知らないけどツナデは僕と同じ環境で育ったから……まぁそうだね」


「にしてはプロポーションに隙が無いんだけど……」


「まぁアレでも女の子だから。あまり鍛えすぎて『お兄様に敬遠されたら困る』っていう事情もあるんじゃない?」


「乙女心も複雑ね」


「フィリアは冷静だよね」


「?」


「僕に対してガツガツしてないって言うか……」


「まぁねぇ」


 やはり困ったような声。


「何かあるの?」


「基本的にマサムネちゃんはフォトンちゃんとツナデちゃんが好きでしょ?」


「う……」


 腕立て伏せをしながら言葉を失う。


「見てたらわかるわね」


「わかりますか……」


「うん。大好きなマサムネちゃんのことはお姉さん何時も見てるもの」


「そりゃ恐縮」


「恋って厄介よね」


「否定はしない」


「今日は一緒のベッドで寝ましょうか」


「別に構わないけど」


 腕立て伏せ。


「何もしないよ?」


「マサムネちゃんらしいね」


 クスクスと僕の背中に乗って笑うフィリアだった。


「ええと」


 と言葉を探して、


「忍……だっけ?」


 曖昧模糊とした疑問。


「何が?」


「マサムネちゃんとツナデちゃんの職業」


「まぁ職業と言うほどでも無いけど……」


「改めて聞くけどどういうモノなの?」


「ま、諜報や解析……あるいは暗殺なんかの裏仕事をこなすモンですな」


 腕立て伏せ。


「裏仕事……」


「あんまり現代……」


 と言っても通じんか。


「異世界では役に立たない情勢だけどね」


「そうなの?」


「ツナデが拳銃を持ってるでしょ?」


「ええ。コルト……なんだったけねぇ?」


「コルトガバメント。M1911A1」


「そうそれ」


 認識するフィリア。


「対人戦においては凄い威力よね」


「あれで『あまりに時代遅れ』って言えば少しは分かる?」


「そうなの?」


「そうなんです」


「あれ以上って言うとあんまり想像できないんだけど……」


「例えば銃弾を毎分数千発をも連続で放つ銃とか、シーカで狙った場所に爆薬を発破させるミサイルとか、都市レベルを吹っ飛ばす核兵器と色々取りそろえられておりまして」


「それ、本当?」


「嘘つく理由もないでしょ?」


「仮にそうなら魔術より危険な技術じゃなぁい?」


「その通り」


 他に言い様もない。


「ま、こっちの世界にはまだ関係ない代物だけど」


「よねぇ」


 です。


「ところでマサムネちゃん?」


「何でっしゃろ」


「このホテル。地下にバーがあるの。付き合ってくれない?」


「風呂に入った後でいいのなら」


「一緒に入ろうね」


 まぁ大貧民で勝ち得た僕との同室であるが故にフィリアが攻勢に出るのもしょうが無いことではあったけども。


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