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渚の国18

 それから。


 日の高い内に渚の国の大都市に着いた。


 商人さんとはここまでの縁だ。


「なんで護衛を頼んで貰ってこっちが得してるんだろう?」


 としきりに商人さんは首を傾げていたけど、


「まぁ袖擦り合うもと言いますし」


 僕は気さくに肩を叩いた。


「こんなことならお前様らと一緒に居た方が儲かりそうな気がするんだが……」


「命の保証は出来ませんよ?」


 嘘だ。


 少なくともフォトンが居る限り、僕らに『死の絶対性』は通用しない。


 もっともそんな真偽はわかるまい。


「まぁそうだな」


 と納得の商人さん。


 夷の国で大暴れしたことも一くさり聞かせていたから、


「僕らと一緒にいれば命が幾らあっても足りない」


 との打算は当然だろう。


「んだでばここまで護衛ありがとな。それから盗賊のお宝も」


「それで美味い物でも食ってください」


 そう言って僕らは別れた。


 大都市の大通りに馬車を走らせて消えていく商人を見送って、


「ウーニャー」


 と僕の頭の上に乗っかっているウーニャーが言う。


「んで。どうするのパパ?」


「とりあえず今日はここで一泊」


「妥当だね」


「それから……は明日考えよう」


「マサムネ様」


「なに?」


「王に拝謁する件は?」


「王都に着いてから考えましょ」


 両手を挙げてグーパー。


「ですね」


 特に不満もないらしい。


 元より刹那主義な僕らだった。


 と、


「覚悟ーっ!」


 錆びた剣を重そうに引きずりながら僕目掛けて襲いかかってくる美少女一人。


 知った顔でもないけど何かしら接点があるのかしらん?


 恨まれることは……まぁ両手の指では数えられないんだけど。


 とりあえず、


「てい」


 と美少女の顔面にやくざキック。


「ごへはっ!」


 と珍妙な悲鳴を上げて少女は倒れ伏す。


「お兄様にしては優しい対応ですね……」


「んー。まぁ別に殺しておかないとしこりが残るって類でもないしね」


 平然と言ってやった。


 少女にも聞こえるように。


「で、何の用?」


 気さくに声をかけると、


「我が剣の錆となれ」


 また襲いかかってくる。


 またやくざキック。


 再び倒れ伏す少女。


「何がしたいの?」


 特に練られた剣技ではない(というかそれ以前の問題でおそらく剣を持ったのはコレが初めてか数回目だろう)ため扱いに苦慮することもない。


 別段女性優遇主義者でもないため顔面を蹴り潰すことに罪悪感は覚えないけど、少女の愛らしさ故に手心が加えられるのもまた否定はできなかった。


「貴様」


 と少女。


「賞金首だろう」


「賞金首?」


 ポクポクポク……チーン。


「おお」


 そういえばそんな設定もあったね。


 何のことかと聞かれれば答えざるを得ないけど、光の国から賞金をかけられている僕たちだった。


 正確にはそこのライト王。


 ダモクレスの刃を恐れるライト王にとって無限復元のフォトンは一種の安全装置だ。


 というよりバックアップが正確か。


 何せ暗殺されようと毒殺されようと無限復元に適応されれば無かったことになるのだ。


 さすがに老衰まではどうにもならんけど心の安寧という点においてはジョーカーのような存在がフォトンだ。


 で、経緯はともあれ僕はそのフォトンを光に国から拉致した不届き者として賞金をかけられた。


 正確には僕とフォトンとツナデが、だ。


 すっかり忘れていたけど、大都市とも為れば情報も流通する。


 賞金目当てに襲いかかる人間が居てもおかしくはないだろう。


「お兄様?」


 と底冷えするような声でツナデ。


 ちと怖い。


「始末しましょうか?」


「うん。まぁ。それもいいんだけど……」


 少なくとも僕の敵は即ちツナデの敵だ。


「不老不死だろうから殺せないんじゃあ……」


「痛みを感じないわけでもないでしょう? 心を殺すことは出来るのでは?」


「別段盗賊さんたちと違って背後にお宝が有るわけでも無いし。無視して構わないんじゃない?」


「お兄様がそう仰られるならツナデとしても手を引きましょう」


「いい子いい子」


 僕はツナデの頭を撫でた。


「あう……」


 トロンと恋慕に溶けるツナデの瞳。


「うん。可愛いね」


「えへへぇ」


 僕が褒めるといじらしく照れる様はやはり男心を鷲づかみだ。


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