表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/512

渚の国17

 というわけでお馴染みの徴税の時間である。


 野盗さんたちも生活しなきゃいけないからある程度の蓄えは持っていて必然だ。


 商人の食料ばっかり狙ってたら儲ける前に餓死する方が先だから。


 であるため縄張り争い以外の面において野盗は集落近くに居を構えて金銭やりとりもしなきゃいけないって都合。


 特にここ……渚の国では食料の価値は低く、代わりに地金の価値が高い。


 であるためアジトの襲撃をするのも旨みがあるというわけだ。


 そう聞くと僕らは悪に対して悪を行なっているように見えるけど実際は違う。


 地金を野盗のアジトにため込まれるくらいなら僕らがそれを有効活用して市場に金銭を流動させた方が良いというわけ。


 つまり、


「社会正義のために渋々盗賊さんたちのアジトを襲撃せざるを得ない」


 のである。


 この場合『渋々』が肝だ。


 僕たちとて喜んで野盗さんたちを懲らしめているわけではない。


 社会正義に奉仕するために致し方なくなのである。


 ……。


 …………。


 ………………。


 ……………………。




 ……信じてくれたかな?




 閑話休題。


 盗賊のアジトに辿り着く。


 メンツは僕とフォトン……それから興味本位でついてきた商人さん。


 特に気配を隠すこともなくアジトに近づいたので当然見張りにバレる。


 商人さんはフォトンと手を繋いでいるため無限復元が適用されて一切の害的現象が適応されない。


 僕?


 ご存知の通り野盗さんたち相手なら保険の必要も無いだろう。


 オーラも展開しているため不意打ちも意味を成さない。


 矢が飛んできたけど……お粗末。


 サクリと躱す。


「金を以て命ず。超振動クナイ」


 高速で振動するクナイを魔術で創り出し、


「疾っ」


 呼気一つ。


 オーラで捉えてる弓手に投擲する。


 それは肉をあっさりと穿って痛覚を大いに刺激した。


 それのもたらした結果については語らないけど。


「何者じゃおんしら」


 さすがに商人さんは驚異を覚えているらしかった。


「人より生き方が上手いってだけですよ」


 謙遜……になるのだろうか?


 肩なんてすくめてみせる。


 見張りが呼んできて盗賊の拠点向きの洞窟から野盗さんたちがアリのようにゾロゾロ現れた。


「ほう」


 と感嘆の声を上げたのは野盗の一人。


 着ている服の光沢で、


「あ、こいつが頭か」


 と瞬時に判断。


「先遣はどうした」


「皆殺し」


 一人も殺していないけどこの際ブラフも有益だろう。


 特に憂慮するような言葉でも無い。


 見ず知らずが死んだところで感慨を覚えるわけでもないのだ。


 でなけりゃ元々の僕の世界(つまるところ巫女が神を観測しなかった世界)で殺人事件がニュースになる度に日本人一億数千万は哀惜の涙を流して然るべき。


 しかして日本で殺人事件が起きても一億数千万人の日本人は、平然と朝食を取り、平然と歯磨きをし、平然と身だしなみを整え、喪服ではない服を着て、登校や出勤する頃には完全に忘れ去る。


 人の命はその程度のものなのだ。


 であるため、殺人というものに対して本質的に罪は存在しない。


 あるのは心を仮託した対象への同情と依存の欠落……あるいは損得関係による不利条件の勘案だけだ。


 なので遠慮はあんまり無かった。


 で、


「とりあえず溜めている財宝を全部吐き出してくれます?」


 謙虚に僕は言った。


「舐めてるのか。この人数を相手にすると?」


 十人強の盗賊さんたち。


「交渉不成立……と」


 僕は両手で印を結んで、


「火遁の術」


 と遁術を行使。


 火の遁術の名の通りに山賊たちが一斉に燃え上がる。


 強烈な疑似体験は脳に全身火傷を誤認させ、全身に水膨れが出来る。


「――――!」


 あまりの熱量に大声を上げてのたうち回る盗賊さんたちだったけど面倒なのでここでは記述しない。


 しばらく待っていると全員が全員ショックで気絶していた。


 ま、こんなところでしょう。


「じゃあ行こっか」


 僕を先頭にフォトンと商人さんが後を追う。


 金貨や銀貨、金地金に宝石等々。


 ザックザクだった。


 やはり大都市近くで隠遁できる場所があれば盗賊にとっては隠れやすく狩りやすい環境なのだろう。


 盗賊さんたちには謝辞を表明して、せめて彼らの遺産が有益に活用できるようにお宝をフォトンの四次元ポケットに収納するのだった。


「あ、こちらの金貨銀貨の類……いります?」


 商人さんにそんな提案。


「え? もらっても?」


 商人さんはポカンと口を開けた。


「馬車に乗せて貰ってお世話になってますし。それにこちらの懐から出た金でもないので不利益はありません。血に塗れた金で良ければどうぞ遠慮せずに貰っちゃってください」


「いやはや。敵いませんな……」


 心底驚愕しながらも商人さんはお宝の一部を受け取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ