渚の国16
そんなわけで今日も今日とて馬車に揺られる。
僕は、
「…………」
薬効煙をプカプカ。
これもまたいつも通り。
「ウーニャー……」
ウーニャーはオーラの知覚を練習しているところだった。
と云っても僕の指を立てた本数を数える程度のことだけど。
「ところで」
とこれは商人さん。
大都市に向かっている最中のことだ。
「お前様がたは南から来たけど形の国から?」
「いえ」
否定する僕。
「?」
ってなるよね。
まぁ。
「夷の国から来ました」
「夷の国!?」
驚愕する商人さん。
気持ちは分かる。
「じゃあ脱走者?」
「いいえぇ」
またしても否定。
「単に観光旅行で顔を出しただけですよ?」
「夷の国に?」
「夷の国に」
「べっぴんさんを連れて?」
「べっぴんさんを連れて」
「犯されなかったのか」
「まぁ戦力が桁違いだし」
「暴力をはねのけた……と?」
「イセイ王にも面会しましたよ」
「それはそれは」
本気で驚いているらしい。
まぁ色々と、
「一国を滅ぼせる戦力」
だし。
「ううむ」
商人は悩んだ。
「おんしはソレで良かと?」
「とは?」
「もしその話がホラでないならギルドでも上位に食い込む威力だろう」
「んだね」
否定の余地もない。
「ギルドに所属は?」
「まぁ色々ありまして」
「ふむ」
と商人さんは思案。
「本当に食事の都合だけで良いのだろうか?」
「こっちとしては有り難い限りです」
金貨は食べられないし。
「まぁそう云うなら否やはないのだが」
とそこに、
「ウーニャー!」
とウーニャー。
「どうかした?」
薬効煙をプカプカ。
僕はそう問うた。
「野盗の軍勢!」
「さいでっか」
「……っ!」
絶句する商人さん。
「大丈夫……なんだろうね……?」
「ええ、まぁ」
信用させるに足る言でもなかったけど他に言い様もない。
オーラの展開。
野盗の見張りを感知する。
「それでは先に片付けてきます」
そう言って僕はリミッターを解除して、馬車から先行した。
「火と金を以て命ず。超振動兼超高熱刀」
振動と高熱を纏った長物の刀を具現する。
そして巣を張っている野盗の見張り組に喧嘩を売る。
「なんだお前?」
隠れているつもりだったろう野盗たちに、
「殺していいか?」
僕は端的に挑発した。
「舐めてんのか……」
「まぁ言ってしまえば」
僕も否定はしない。
「なんなら野盗さんら全員でかかってきていいよ?」
僕がそう云うと、
「…………」
野盗の一人がパチンと指を鳴らした。
同時に複数の矢が僕を襲ったけど、オーラで感知している僕には欠伸ものだ。
サラリと避けてみせる。
「さて……悪意は見せて貰った。なら自己保身に走るよ?」
そして僕は超振動兼超高熱刀を野盗たちに振るう。
サクリサクリと野盗らが斬られていく。
とはいえ高熱が切り傷の出血を焼いて防ぐためさほどの被害ではないのだけど。
オーラで十キロメートル先まで感知しているため全滅にさほどの時間は必要ない。
後追いで追いついてきた馬車を確認し、
「もういいよ」
と僕は刀を霧散させる。
「ふわぁ」
と商人さんは驚愕していた。
さもあろうけど僕らにとっては当たり前のことだ。
誇るつもりももちろん無いけど。