渚の国11
翌日。
次の村に着いた。
先の村より寂れた様子ではない。
活気があり、市場があった。
長持ちする食品も売られていたため補充する。
「お、あんたら例外を除いて美人揃いだね」
金銭取引した商人が愉快げに云う。
大きなお世話だ。
「デッド王に拝謁するんかい?」
「そのつもりです」
と醜女のドーリ。
「まぁあんたはそうだろな」
くくと笑われる。
まぁしょうがない。
「商いさんは不老不死に興味は?」
「ねぇな」
さっぱりしていた。
「世界中見て回って商売して、命尽きるまで放浪できればソレが一番さ」
「羨ましいですね」
そういう生き方もありだ。
僕は薬効煙をくわえて火を点ける。
煙を吸って吐くと思考がクリアになった気がした。
「べっぴんさんたちはお坊ちゃんのハーレムかい?」
「はい」
「ええ」
「だね」
「ウーニャー!」
「よねぇ」
僕の返事も待たず全肯定。
……君たちね。
「ただの仲の良い友達です」
超嘘つき。
話題転換。
「取引のよしみで馬車を持って王都に向かう商人を紹介してくれませんか?」
「なんならおいの馬車に乗るかい?」
「王都まで?」
「いや、中間地点の都市までだが。活気があるしギルドもあるしで王都への移動手段に困ることもないぞ?」
「ではその都市まで」
「相分かった。ところで坊ちゃん嬢ちゃん方は腕がたつんかい?」
「まぁ基本的に」
「護衛のクエストを受けたこともありますよ」
「そりゃ頼もしい。んじゃ契約しねえかい?」
「護衛代を貰えると?」
「雀の涙で良ければ」
「食事を提供して貰えれば金銭を払う必要もありませんよ」
「太っ腹な」
「一応経済的に潤っていますので」
平然と僕は云った。
フーッと煙を吐く。
「ジョイントとは剛毅だな」
「ま、色々ありまして」
「魔術でジョイントが作れるなら便利だよな。それで商売はしないのか?」
「小銭稼がなくともおにゃのこたちが支えてくれますから」
肩をすくめて見せた。
「ヒモかい」
「ヒモです」
超ひも理論です。
「とりあえず時間も時間ですし今日はこの村に泊まりましょ? 民宿のお題は護衛代に含まれますかね?」
「そりゃ構わんが……」
で、そういうことになった。
「ところで」
とこれはフォトン。
「不老不死の溢れる国で商売は成立するのですか?」
「そりゃあ色々あるさ。死が怖くない人間にとっては娯楽と刺激が第一義だ」
商いさんはサックリ言ってのけた。
「たとえばそこのあんちゃんのジョイントみたいにな」
あえて誤解はスルーした。
「後は……そうだな。渚の国の国民は食事を必要としないから穀物の類を低価格で取引できるし」
「なるほど」
フォトンは唸った。
「なんか思ったより普通の国ですね」
これはツナデ。
まぁ同感。
なんというか不老不死はフォトンで見飽きてるし。
それにさえ目を瞑れば牧歌的な国の様に思えた。
「嬢ちゃんらはやはし不老不死になりたいのかい?」
「いえ」
「さほど」
「別に」
「ねぇ?」
淡泊な返答だった。
「ウーニャーは興味ないかな?」
僕の頭の上でウーニャーが結論づける。
「では何故?」
「そこまで教える必要はありません」
フォトンが断ち切った。
まさかブラッディレインを追っているとは言えないだろう。
ドン引きされること確実だ。
「ふぅん?」
と探るように商いさんは言ったけど、特に興味も無いらしく、
「いいんだがな」
と云って口を閉じた。