渚の国05
昼食となった。
「ん。美味」
僕は言った。
相変わらずの川魚の姿焼きだけど国によって魚が違うため色々な味が楽しめる。
これも巫女の意図したところなのだろうか?
「竜王様の食事は良いんですか?」
これはドーリ。
「ウーニャー!」
尻尾ペシペシ。
「ドラゴンは食事が要らないからね!」
「便利ですね」
心からドーリは言った。
「ではフォトン様は?」
「食事が必要ないという点ではドラゴンと同じですよ。ただ習慣的に食事を取らないと落ち着かないんです。食事と呼吸と脱糞は人が人として生きるための最低限ですから」
食事中に脱糞とか言わないで欲しい……。
「じゃあオーラを永続的に発露できうるの?」
これは僕。
「ええ」
とサックリ言うフォトン。
以前、光の国でオーラの展開にカロリーを消費するからと世界樹の実を持たせたのは徒労か。
「いえ」
とフォトン。
「死にはしませんけど空腹は覚えますから」
難儀な体質だことで。
「世界樹というと……」
とこれはドーリ。
「うん。樹の国の観光スポット」
知らないわけがないだろう。
「その果実を食べたんですか?」
「ええ」
とツナデ。
「だね」
とイナフ。
「よくエルフが許しましたね……」
「まぁマサムネちゃんは色々と乱暴だし」
フィリアが苦笑した。
「…………」
不本意だったけど反論の余地は無い。
基本的に売られた喧嘩は買うタイプだ。
それを言ってしまえば僕の旅の連れは全員そうなんだけど。
基本的にこっちから仕掛けることはまずない。
オーラで先見して排除する事はあっても、それだって野盗がいなければそれで済む話なのだ。
色々と人権は損なっているけど社会正義に反した覚えは無い。
所謂ところの受動的対処。
「例えばこんな風に」
僕が焼き魚を食べ終わって串を地面に刺すとそう言った。
「ふえ?」
とドーリ。
一人オーラを確認できないためしょうがないだろう。
というかオーラの展開は出来てもフォトンとウーニャーとフィリアにはまだ状況認識は早い。
オーラを展開する事で触覚にも似た情報を感知できる事は先述したけど、オーラ内のありとあらゆる情報を脳が認識するため、
「基本的にこっちの望む情報を取捨選択する」
ということには慣れていない。
真っ向から膨大な情報全てに対応してしまうのだ。
そこから必要な情報以外を削ぎ落とすのは経験と勘による。
そして僕のオーラは無駄な情報を削ぎ落として事実を客観的に伝える。
それはツナデがそうであろうし、イナフがそうであろう。
「野盗だよ」
と僕は言った。
そしてそれは現実となった。
別段特筆すべき事でもないんだけど。
「国王の統治する国でも野盗は出るんだね」
僕が言う。
「一応選別が行なわれます故」
ドーリが言う。
「ま、いいんだけどさ」
僕は焼けた干し肉をモキュモキュと食べ始める。
そんなことをしている内に野盗は僕らを包囲した。
計十一人。
「…………」
僕は淡々と焼いた干し肉を食べる。
その他のメンツも淡々としていた。
一人、
「うわ……うえ……」
ドーリが狼狽える。
まぁ気持ちはわからんじゃないけど。
僕は干し肉をもむもむ。
特に気負いは無い。
「舐めてんのか……」
盗賊の一人がそう言った。
「そんなつもりは毛頭」
アグリと干し肉を噛んで飲み込む。
「お兄様?」
ツナデだ。
「とりあえずどうします?」
そんな馬鹿らしい問い。
「ツナデとイナフで殲滅して」
僕はそう言って食事を続ける。
別段遠慮する事もない。
敵対する相手は押しつぶす。
それが僕らの流儀だ。