渚の国04
次の日。
さっそく王都に向かう事になった。
馬車は調達できなかった。
ので、歩き。
もはや慣れたせいか歩き旅もそれはそれで趣深い。
開拓された道を歩きながら朗らかに。
「それにしても」
とはドーリ。
「マサムネさんは凄いですね」
「何が?」
「こんな美少女たちと旅を為されているんですから……」
「いやぁ」
「あは」
「にゃはは」
「ウーニャー」
「上手ね」
照れる四人と一匹。
多分ウーニャーは加算されていないだろうけど人型に為ったときのウーニャーも愛らしいのでこの際いいだろう。
空は陽気でポカポカ暖かい。
川はせせらぎを唄いながら流れゆく。
そんな中をテクテクと歩く。
太陽の傾きで時間を定義しながらゆっくり進む。
途中、昼食と為った。
川に沿って道が作られていたためすぐ傍で昼食と為る。
僕は河原で虫を見つけると針に刺して釣り糸を垂らす。
毎度お馴染みの釣りである。
「ウーニャー……」
僕の頭の上でウーニャーがのんべんだらり。
「疲れた?」
と僕が問う。
「うんにゃー」
と否定。
まぁ僕の頭に乗っかっているだけだから疲れるはずもないのだけど。
「パパ?」
「何でっしゃろ?」
「不老不死って魔術で出来るの?」
「一応フォトンという実例があるしね」
「でも……」
何だろう?
「世界五分前仮説」
とウーニャー。
「ああ」
と僕は頷く。
「まぁ確かに歴史は無いね」
苦笑してしまう。
いつも僕と一緒に居るせいかウーニャーもある程度ドライな思考を持ったらしい。
つまりこういうことだ。
この世界は巫女が望んで生まれた平行世界。
それも巫女が望んだのがどれほど昔かは分からないけれど、それでも五年は超えないだろうと予測できる。
で、ある以上、それ以上の過去はでっち上げられた架空の記録だ。
人の記憶も。
文明の発達も。
愛する者の死と、それに付随する悲しみも。
現実に起こったのはここ数年の出来事。
もっとも世界五分前仮説に則るなら、
「僕が異世界から召喚された」
ことさえ実は架空の記憶かも知れないのだけど。
その辺の事はあまり深くは考えていない。
この世に客観はあり得ない。
皆が皆、自身の意識でしか世界を把握できないのだ。
で、あればゾンビワールドだろうと構いやしないのが僕の意見。
そう言うと、
「ウーニャー」
ウーニャーは尻尾をペシペシ。
「少なくともウーニャーは偽物じゃ無いよ?」
「零歳児ですもんね」
苦笑する他ない。
ある種の限定的な純粋物。
それがウーニャーだった。
「パパは不老不死に興味は無いの?」
「ん~?」
しばし考える。
結論。
「特に興味は湧かないかな」
「そなんだ」
「そなんです」
別段命に頓着してないわけでは無い。
ただ、
「面白おかしく生きれれば良いかな?」
程度の感想。
付け加えるなら、
「フォトンとツナデに付き合えれば後はどうにでも」
とも言える。
「パパはツナデが好きなの?」
「恋慕の情に関しては論じないけど平行世界では僕の唯一の味方だったからね」
苦笑するほか無い。
ここには僕に敵対する人間は居ない。
義父も義兄も存在しない。
ただ必死に僕を想うツナデだけ。
正直転びそうにはなる。
でもフォトンにも恩はあるわけで。
他の面々も僕に好意を寄せてくれる。
有り難い以外の感情がわかない。
だから考えないように蓋をしている側面も有る。
少なくとも……誰を幸せに出来るかは僕の持つカードの切り方に依るのだ。