夷の国31
「ふい~」
お風呂千両。
入浴万両。
「なんてね」
僕はイセイ王の勧めで風呂に入っていた。
ちなみにヒロインズはいない。
ので、お色気シーンはありません。
「お医者様でも草津の湯でも惚れた病は治りゃせぬ」
なんてね。
ツナデをどうにかしないとなぁ。
まぁウーニャーはありえないんだけど。
そんなことを思いつつ浮世の垢を洗い流す。
と、
「失礼しよう」
そんな声が聞こえてきた。
「…………」
沈黙。
他に何を選べと?
その声は、
「ふむ」
と僕を値踏みした。
アルトの声だ。
「イセイ陛下?」
「たしかに吾輩はイセイだが?」
「…………」
無粋だ。
けど反論しようにも……。
「なんで入ってきたんです?」
「なに」
イセイ王は苦笑する。
「そなたとお近づきになりたくてな」
「そんな大層な存在じゃないんですけど……」
「そう言うな」
苦笑される。
「卑下しても良い事は無いぞ」
「謙遜って言ってくれます?」
「ともあれ君は魅力的に男の子だ」
さいですかー。
「しばし待ちおれ」
何を?
「体を洗ったらそちらに入るが故に」
「…………」
それはそれで問題なんだけど。
が、
「…………」
反論の言葉を思いつけず僕は黙った。
そしてイセイ王が僕の隣に腰かけた。
風呂に肩まで浸かって、
「初心だね君は」
僕の腕に抱き付いてくる。
豊満な胸がギュッと腕に押し付けられる。
あわわ……!
六根清浄六根清浄。
自分を律する。
そして嘆息。
「はぁ」
疲れきった声だった。
我ながら。
さて、
「どういうつもり?」
僕は問う。
「というと?」
イセイ王は空っとぼける。
「僕に構ったって良い事ないよ?」
「それは吾輩が決めることだ」
ですよね~。
納得は出来ないけども。
「吾輩の胸は大きいだろう?」
モニュッと豊満な胸が押し付けられる。
六根清浄六根清浄。
「まぁ巨乳ではあるよね」
僕はなるたけ冷静にそう言った。
「好きにしたいとは思わないかい?」
「好きにって……」
それはイセイの豊満なバストをですか?
「然り」
くつくつとイセイ王は笑う。
「痴女ですか?」
「失敬な」
心底憤慨したようにイセイ王。
「吾輩は吾輩の意思でここにいる」
「意味がわからないんですが……」
本音だ。
意図不明なのは今に始まったことじゃないけど。
「マサムネ……」
「何でっしゃろ?」
「お主は魅力的だな」
「そうでしょうか?」
「自覚は無いかや?」
「ありませんね」
心底そう思う。
「吾輩を抱いては……」
「くれません」
そんなことをしたらヒロインズに嬲り殺されますよ?
僕がそう言うと、
「業が深いね。そなたは」
苦笑いするイセイ王だった。
否定はしない……というか出来ないけどさ。