表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/512

夷の国30

「私とラセンが同一の姿を……?」


 フォトンの声は擦れていた。


「然り」


 遠慮なくイセイ王は頷いた。


「フォトンとラセンは全く同一の姿をしている。ここまでくれば双子どころかコピーと言っても過言ではない」


「そんなはずありません」


 フォトンの抗弁。


「ラセンは男性の魔術師で……!」


「だからそれはエルフ魔術による錯覚であろう?」


「……っ!」


 絶句するフォトン。


「何やら話に靄がかかり始めたね」


 僕はコーヒーをすする。


「ウーニャー?」


 ウーニャーは平常運転。


「でも何故それを貴女が知っているのです?」


「エルフ魔術を操る者にエルフ魔術は通じない」


 道理だ。


「ラセンの変化を見抜けるのは夷の国で吾輩だけよ。故に吾輩はラセンのエルフ魔術を看破してその真たる姿を見て取った」


「…………」


 ふむ。


 僕は考える。


 フォトンの師匠。


 同一能力たる無限復元。


 殺戮と救済の両面性。


 エルフ魔術までもを技術として昇華する存在。


 そして何よりフォトンと全き同じ姿。


 ヒントは無数にある。


 なんとなく予想はついてきたね。


 ラセンと云う存在にさ。


「ラセンがエルフ魔術を……?」


「信じられない」


 というフォトン。


「そう言っておろう」


 イセイ王に躊躇なぞ微塵も無い。


 僕はコーヒーを飲んで、


「ホッ」


 と吐息をつく。


「そんなわけでフォトンはラセンを探しているんです」


「何のためにかや?」


「私の……」


 とこれはフォトン。


「無限復元を解いてもらうために……!」


「便利でよかろう」


「死にたくても死ねない人間なぞ有り得てはいけません」


 きっぱりとフォトン。


「ふぅむ……」


 イセイ王は何かを考えるように天井に視線をやった。


「お主がそう言うならそうなのだろうか」


 そして茶を飲む。


「イセイ陛下」


「なんぞや?」


「ラセンが何処に行ったかはわかりませんか?」


「無茶と云うものじゃて」


「ですか……」


 しょんぼりするフォトンに、


「しかして目的は聞いた」


 ばくだーんはつげーん。


「ラセンの目的……?」


「然り」


 茶を飲んで、それから頷かれる。


「ラセンの目的とは?」


 最重要事項だろう。


 少なくともフォトンにとっては。


「剣の国を探すと言っていた」


 さもあっさりと言ったイセイ王の言葉に、


「っ!」


 フォトンとイナフとフィリアが絶句する。


 はて?


 剣の国?


 それがどうしたというのだろう?


 そんなことを言うと、


「剣の国は一種の理想郷なんです」


 フォトンが講釈してくれた。


「理想郷?」


「然りです」


 コックリ。


「この大陸のどこかにあると言われる国の名です。剣の国は一面荒野で……一般的な剣から魔剣や聖剣までもが地面に無数に突き刺さっていると言われています」


「その剣は使えるの?」


「はい。引き抜けばそれが自身の剣になると」


 なんとなくUBWを髣髴とさせるね。


「中には神殺しの魔剣まであるとのこと」


「神殺しって言うと……」


「はい」


 コックリ。


「大神デミウルゴスを殺すことの出来る魔剣まで存在すると言われています」


 それはまた壮大で……。


 となるとラセンの目的は……。


 多少思案する僕だった。


「もしかして」


「しかしてまさか」


 そんなアンビバレンツな思惑に囚われていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ