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夷の国29

 案外すんなりと目通りが叶った。


 とは言ってもあくまで豪華な屋敷であって、城でもなければ神の国の神都のように一個の街として成立しているわけでもない。


 見るに護衛の兵士は屈強な男どもだったけど、使用人は女性ばかりだ。


 だからなんだってわけでもないけど。


 ちなみに僕はもうオーラを引っ込めている。


 相手方はまだオーラを展開しているみたいだけど、僕みたいな特異体質でもなければ衰弱死を起こしかねない。


 知らないけどさ。


 女性の使用人に案内されて奥の間へ行くと、イセイ王が待っていた。


 使用人が立ち去り、それからようやっとイセイ王はオーラを引っ込める。


「…………」


 その容姿に僕は驚いた。


 それはフォトンもそうであろうしツナデもイナフもフィリアもそうであろう。


 ウーニャーはわかんないけど。


「ダークエルフ……」


 誰が漏らした言葉か。


 それがしっくりくる外見だったのだ。


 イセイ王は。


 シルクを思わせる白い髪。


 ルビーを思わせる朱い瞳。


 そして何より黒い肌。


 ジュブナイルや漫画やゲームに出てくる……いわゆるところの、


「ダークエルフ」


 に相違なかった。


「この国を取り仕切っているイセイ……だ。そちらのマサムネとフォトンとツナデは知っているが、一応紹介してもらっていいかや?」


「フォトンと申します」


「ツナデです」


「イナフだよ」


「ウーニャー」


「フィリアよ」


「ふむ。マサムネが目をかけるだけあって美女揃いだな」


 まぁ否定は出来ない。


 納得も出来ないけど。


「全員オーラが使えるのかや?」


「まぁ」


「では変化も透明化も無意味……か」


 だね。


 遁術における変化の術や透遁の術のことを言っているのだろう。


「茶は何が良い? 一応一通り大陸に有る物は揃えているが」


「コーヒー」


 そんな僕の言葉に、


「同じく」


 とヒロインズが同意する。


 ウーニャーは例外だけどね。


 そして畳の上に敷かれた座布団に胡坐をかいて座り、僕はコーヒーカップを傾ける。


 ズズズ。


 コーヒーを飲む。


 しばらく茶を楽しんだ後、


「で、夷の国に何用か?」


 イセイ王が至極真っ当な質問をしてくる。


「観光旅行」


 あっさり言ってやると、


「…………」


 イセイ王はジト目になった。


「こんな何もない場所に?」


「海の幸は美味しかったよ?」


「本当にそれだけかや?」


「フォトン以外はね」


「やはりか」


 ん?


 何で納得したの?


「ブラッディレインを探しているのだろう?」


「ブラッディレインを知っているのですか!?」


 予想以上にフォトンは食いついた。


「ああ、二か月ほど前だったかのう……。フラリと夷の国に現れてな。魔術で民を皆殺しにした後、無限復元で修正して出ていった」


「ラセンが……!」


 少なくともトカゲの尻尾程度の足取りは掴めたわけだ。


「そなたらは双子かや?」


「誰と誰が?」


「ラセンとフォトンとが、だ」


「そんなわけないでしょう?」


「そうか」


 言って、


「ふぅむ……」


 とイセイ王が唸る。


「まぁオーラで読むに双子であるはずもないか……」


 そして緑茶を一口。


「何を以て私とラセンを関連付けたのです?」


「なに。簡単なことだ」


 湯呑をコトンと木製の受け皿においてイセイ王は言う。


「深緑の髪の美少女。即ちラセンとフォトンが全く同一の姿をしているからだよ」


「…………」


 …………。


 ……………………。


 ………………………………。


 …………………………………………はい?


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