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夷の国28

 僕はオーラを広げる。


 五里に至るまで。


 意識したのは夷の国の中央にある屋敷。


 一人の例外を除いて誰も僕のオーラに気付いた気配がない。


 その例外だけがピクリと体を振動させソレを、


「不覚」


 ととったか舌打ちするのだった。


 例外をオーラで感じ取る。


 女性だ。


 パイオツカイデーだし股間にブツが無い。


 オーラで姿を感じ取るにフィリアより若いがフォトンより年上である。


 わかりにくい表現かもしれないけど《フィリア》が、


「お姉さん」


 なら《例外》は、


「お姉ちゃん」


 といった感じの気さくな年齢的外見。


 あくまで外見だけで云えばね。


 本来の年齢はもうちょっと違うだろう。


 なにせ耳が長いのだ。


 髪はきめ細やかで顔立ちは端正。


 耳が長くて美少女とくれば、


「エルフ」


 に相違ないだろう。


 イナフより外見的に年上と云うことはつまりそういうことだ。


 エルフの美少女もオーラを展開してきた。


「っ!」


 ヒロインたちが僕のではないオーラを察知して身を固める。


 クライネが、


「どうかしましたか?」


 とすっ呆けたことを聞いてきたけど、答える人間はいなかった。


 ともあれ僕とエルフの女性は互いに互いでオーラを以て感知しあっているのだ。


 エルフの女性が言う。


 というより動かした口の動きで勝手に言葉に変換する。


「まさかマサムネがエルフ魔術を使えようとはな」


 そういえば遁術はこっちではエルフ魔術だっけ?


「知ってるの?」


 言葉にせず口を動かすだけだったけど、


「然り」


 と答えられた。


 どうやら読唇術の心得はあるらしい。


「金貨二十枚の賞金首。その情報はこちらにも流れてきておる。傍に居るのがフォトンとツナデじゃな?」


「然り」


 同じように返してやった。


「で?」


「とは?」


「そちらのお名前は?」


「ふむ。失念していたな」


 くつくつと笑われる。


「吾輩はイセイと申す」


「…………」


 口は動かさなかったけどあからさまに目を細める。


「そんな顔をするな。嘘をついても得にはなるまい」


 そうだけどさ。


「ありえない」


「まさか」


 とは思いはしていたけど、


「いやしかし」


 と覚悟もしていた。


 曰く、


「イセイ王は千里眼と祟りを操る」


 そんな風説を僕らは聞いていた。


 そしてそれを解決する能力を僕らは身近に持っている。


 千里眼はオーラによる感覚外知覚。


 祟りはそれによってなる遁術。


 であればこそ威力による恐怖政治を施行でき暴力の横行するこの国で神聖不可侵な王様と成れるのだろう。


 で、この世界で遁術を扱えるのはエルフのみ。


 僕らと云う例外はあるけど、俗世から離れる傾向のエルフから遁術を流布されることはまずありえない。


 何故か?


 オーラを知覚できる者に遁術(エルフ魔術)が効かないからだ。


 遁術を含む忍術。


 これを指して忍者八門と云うのだけど……忍術が秘匿性の高い技術として昇華されているのにはここに理由がある。


 遁術使いに遁術が通じない以上、遁術の使い手は少なければ少ないほど威力としての……あるいは牽制としての……あるいはカードとしての有用性が増すのだ。


 それはこちらでも同じだろう。


 秘匿文明を築くエルフ。


 その使うエルフ魔術。


 遁術はこちらの世界においても秘匿性を重視するモノだ。


 仮に夷の国が全員、明日にでもオーラを習得すればイセイ王はならず者たちの慰み者になる他なかろう、とそういうわけ。


 閑話休題。


「ちょっとそっちにお邪魔していい?」


「かまわぬよ」


 案外気さくだね。


「拒否してドラゴンブレスに鎧袖一触されてはたまらんからな」


 あ。


 なるほど。


 そういう使い道もあったのか。


 特に意識したわけじゃないんだけどね。


 で、あっさりとイセイ王は僕らの謁見を許すのだった。


 心中お察しいたします。


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