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光の国15

 次の日の朝。


 僕とフォトンは変化の術で視覚的な変装をしてホテルの朝食をとっていた。


 ちなみに僕が義父の姿に、そしてフォトンが義妹のツナデに変化しているのである。


 何故義父と義妹かと言うと……他に適した人間を思い浮かべることができなかったためである。


 そんなこんなで僕とフォトン……他人から見るところの義父と義妹はホテルで朝食をとり終えるとチェックアウトした。


 金銭はフォトンが都合していた。


 銀貨三枚を払ったのである。


 金貨に銀貨に銅貨に、その他金塊や宝石等……価値のあるものをフォトンは小さな皮袋に詰めていた。


 どう考えても大量の貨幣や宝石を入れることのできる皮袋ではない。


 両手に収まるほど小さな皮袋なのである。


 それについてフォトンに問い詰めると、


「ああ、これは闇魔術にて作った異空間に繋がる皮袋です故」


 そんな答えが返ってきた。


 よくわからないけど四次元ポケットと思えばいいのだろうか?


 まぁいい。


 僕とフォトンは王都の市場を練り歩きながら今後のことを話しあう。


「で、これからどうするのさ?」


「とりあえず一番近い所にある魔の国に行きたいなぁって思ってます」


「…………」


 魔の国……ねぇ。


「国際化領域に指定された国際魔術学院がある国です。もっともワールドワイドで魔術についての研鑽を重ねている国ですね」


「魔術の盛んな国ってこと?」


「はい」


「で、どうやって行くの? 歩き? まさか自転車なんて無いよね?」


「じてんしゃ……ですか?」


「ああ、何でもない」


 そもそも自転車も作られた当初は教習が必要だったと聞く。


 それ以前の文明だとしても全くおかしくはない。


「それで? どうやって魔の国まで行くのさ?」


「無論歩きですよ?」


「馬車とか無いの?」


「ありはするのですけど私たちの世界観光の旅は……少なくとも光の国に出るまでは追われる身ですから」


「他の人間に頼ったら足かせになる……と?」


「そゆことです」


 フォトンは頷いた。


「歩きねぇ……」


「不満なら馬車を借りますか?」


「いや。愚痴じゃないよ?」


「では何でしょう?」


「なんか可愛い女の子と二人旅ってシチュエーションとしてはちょっといいんじゃないかな~……なんて」


「はう。私……可愛いですか……?」


「うん」


 コックリと僕は頷く。


 それだけで真っ赤になるフォトンだった。


 可愛い可愛い。


「コホン」


 閑話休題。


「で、どっちに行くのさ?」


「とりあえずは東ですね」


「東?」


「はい。言ってませんでしたけど光の国は大陸最西方にある国です。そして隣国として魔の国が存在します」


 魔の国……。


 魔術の研究や指南や実行に盛んな国とは聞いているけども「魔の国」なんて言われると悪魔でもいるのかと思ってしまう。


「そういえばマサムネ様は魔術のない世界から来たんですよね?」


「まぁ実在はどうあれ僕は見たことないね」


「なんなら魔の国で魔術を学びませんか? 国際化領域に指定されて各国が優秀な魔術師を送り込んでいる国際魔術学院が魔の国の観光スポットですし」


「魔術学院……ねえ?」


 うさんくさい響きである。


 が、否定しても始まらない。


「まぁ何はともあれ『門を叩け。されば開かれん』って言うしね」


 じゃあ、


「東にいこっか。ところで東ってどっち?」


 そう言った。


 太陽の位置でだいたいの方角はわからんではないけど正確なところはフォトンの方が知っているのだろう。


「こちらです」


 そう言ってフォトンは先導するように歩き出す。


 ちょうど王都の市場を横切る形だ。


 それも計算の内だったのかフォトンは四次元ポケットから金銭を出して、パンや干し肉を買って四次元ポケットに収納する。


 便利な皮袋があったモノである。


 まぁ無いよりは格段にマシだ。


 重たいモノを持たなくて済むというのはアドバンテージの一種だろう。


 そうやって日持ちする食材を買っては四次元ポケットに収納しながら市場を横断し終えると、僕とフォトンは王都の外れに来ていた。


 振り返って景色を見る。


 広い王都の中心は高い壁で取り囲まれていて昨日まで僕たちがいた城は見えなかった。


 僕は独断で「もういいだろう」と判断して分身の術を解いた。


 フツリと僕とフォトンの映像が消えるのを確認した後、僕はオーラの直径を二キロメートルまで縮小し変化の術だけを残す。


 僕の全力である五里……二十キロメートルの十分の一だ。


 これである程度情報の氾濫に溺れないで済む。


 オーラを広げると広げたオーラの中にある全てを感知できるのだ。


 五里も広げればそれだけ精神を摩耗する。


 ともあれ分身の術は十分その役割を全うした。


 後は変化の術で誤魔化しながら王都を出ればいいだろう。


 王都の東端には厳格な門があって多くの騎士がいたが、誰も彼もがフォトンをフォトンとは認識できずに……当たり前だが……意外と簡単に王都の東門から僕とフォトンは出ることができた。

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