夷の国24
次の日。
その朝食。
「うまうま」
僕は……というか僕らは泊まった娼館で朝食をとっていた。
さすがに金貨を払えば邪険にも出来ないのだろう。
それなりの朝食が出てきた。
「それで」
と温かいスープを飲みながらフォトンが問う。
「これからどうしましょう?」
「とりあえずイセイ王に謁見してからこの国を出ようか」
ぼんやりと。
「イセイ王……ですか」
とツナデ。
「ということは中央に向かうの?」
これはイナフ。
「ウーニャー!」
ウーニャーは何も考えてはいないだろう。
「力尽くで?」
なんてフィリア。
「まぁ流血沙汰は今更だけどね」
黒パンをもむもむ。
「思いっきりブレイドファミリーの尻尾を踏みつけたし」
「ツナデがですね」
「ツナデお姉ちゃんが!」
「ウーニャー!」
「ツナデちゃんよね」
いやいや。
「どうせツナデが害さなくとも君らがやったでしょ?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
反論の余地は無いらしい。
当たり前だ。
誰一人とって生半な戦力量ではない。
であるから安心して道連れにしているのだ。
「とりあえず」
と僕は空気を払拭する。
「どうせブレイドファミリーに喧嘩を売ったんだ。ファミリーのゴッドファーザーに会いに行こう」
僕がそう提案すると、
「ウーニャー!」
ウーニャーが快活に同意した。
「ええと……」
と戸惑ったのはフォトンだったけど、
「…………」
言葉にはせねども他のヒロインたちも当惑。
よりにもよって喧嘩を売ったやーさん……というかマフィアのゴッドファーザーに面会を求めるなぞ、
「殺してください」
と宣言するようなモノ……、
「というのはわかるけどさ」
でも、
「今更憂慮する戦力差でもないでしょ?」
「それは」
「まぁ」
「たしかに」
「ウーニャー」
「そうでしょうけども」
僕は黒パンをもむもむ。
それからチラホラと世間話をしながら僕らは朝食を終える。
「ママさん」
と、僕は娼館のママを呼ぶ。
「なに?」
返ってきたのはぶっきらぼうなソレ。
「夷の国の地図とコンパスある?」
「?」
ヒロインたちが、
「わからない」
と表情にし、
「そりゃあるけど」
娼館のママは戸惑ったように肯定した。
「少し貸して」
「構わないわよ」
そして手元には地図とコンパスが。
ここが地球である以上コンパスの正確さは僕とツナデの居た元の世界と同等の能力を備えて必至だ。
そしてコンパスで方角を正確に確認して、夷の国の地図を広げる
「ふむ」
思案。
沈思黙考。
「とすると……」
僕は呟くと、
「あっちの方角か」
相対位置を確認する。
何の?
「ブレイドファミリーのゴッドファーザーの屋敷」
が、である。
「どうも」
と言って僕は娼館のママに地図とコンパスを返す。
それからヒロインズを連れて外に出る。
「ご愛顧ありがとね」
最後にママはそう言ってくれた。
別に金貨一枚くらいで揺らぐ収入支出ではないので問題はないんだけどね。
それは、
「言わぬが花」
だろう。