夷の国23
「さて」
日も暮れた。
今日の活動はここまでとして、
「ねぐらを探そう」
ということになった。
とはいえ夷の国は流刑地。
観光客なぞ来はしない……、
「と云えば僕らは何なんだ」
ってことになるけど、
「とまれ」
宿屋が儲かるわけもなく、そういった商売は存在しない。
ではどうするかというと、
「ベッドを設置してある店に泊まればいい」
と相成った。
娼館。
そこに泊まるのだった。
娼館のママは胡乱げな瞳で僕らを見た。
「ええと……」
言葉に詰まったようだ。
気持ちはわかる。
「客?」
厳密に言えば違うんだけど、
「そんなもんです」
釈明する気も起きない。
「女が女抱いてどうするの?」
もっともな意見です。
でも実際は、
「そっちの意味での客ではありません」
そういうことなのだった。
「部屋を貸してもらえませんか? 相応の報酬は払いますから」
紳士的に言う。
「面の皮の厚いお客さんね」
十全に承知しております。
けど、
「自分童貞なもので」
僕は娼館のレゾンデートルを却下する。
しょうがないっちゃしょうがない。
「部屋を貸せって?」
「まぁ」
忌憚なく言えば。
「一人につき銅貨三枚」
あいあい。
僕はチラとツナデを見る。
「わかっていますよ」
とツナデは無言でうなずく。
そして四次元ポケットから金貨を一枚取り出して、
「はい」
ピンと弾いて娼館のママに渡す。
「……っ!」
絶句するママ。
「いくらなんでもこんな!」
金貨が珍しいらしい。
それもそうか。
貧困がこの国の根幹だ。
であれば、
「まぁまぁ」
金貨なぞ目にする機会も無いのだろう。
「とりあえず部屋を用意してもらえる?」
僕はそんな交渉をした。
「…………」
僕らの正気を疑っているのだろう。
目を細める娼館のママ。
が現実として金貨が手元にある。
「わかったわよ」
「うんざりだ」
と云った様子で嘆息するママだった。
そしてホテル代わりに僕らは娼館の部屋を借りて今日の休息とする。
「ウーニャー!」
ウーニャーは僕と一緒。
まぁ零歳児に手を出す僕でもないんだけど。
ウーニャーは人化していた。
虹色の髪。
虹色の瞳。
そして美幼女。
それが現在のウーニャーの定義だ。
服はパジャマ
少し過激な……ね。
ヒロインズも各々の部屋で今日の疲れを癒しているのだろう。
「ウーニャー!」
ウーニャーが吠える。
「なぁに?」
「パパは童貞?」
「童貞です」
「ウーニャーを抱いてもいいよ?」
「もうちょっとウーニャーが大人になったらね」
「ウーニャー……」
気落ちするウーニャーだった。
是非も無し。
「それじゃ寝るよ」
僕は人化したウーニャーを抱きしめてベッドに入る。
「ウーニャー……」
ウーニャーは一丁前に照れているらしい。
そういうところは可愛らしい。
「まぁ……」
良いんだけどさ。
僕は速やかに眠りについた。
「ウーニャー」
ウーニャーが何か言った気がするけど眠気には勝てなかった。