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光の国14

 その日の夜。


 地球と同じく衛星……月の見える夜だった。


 深夜である。


 僕はフォトンに提案した。


「今夜城を脱出しようかと思うんだけどどうかな?」


 既に王城の構造はオーラによって完璧に把握している。


 城の脱出など成って当然だ。


 が、そんなことを知らないフォトンにとってみれば唐突過ぎる提案だったろう。


「もっと城を調べなくていいのですか? 一朝一夕で抜けられるほどこの城の警備は甘くないですよ?」


「大丈夫。全部把握したから」


「マサムネ様がそう仰るなら私は構いませんが……」


 どうにも信じられないと言った様子だった。


 ちなみに昨日の今日で城からの脱出を提案されるとは思っていなかっただろうフォトンは寝間着姿だった。


「じゃあ。出来れば目立たない服に着替えて」


「スーツでいいでしょうか?」


「うん。いいんじゃない?」


 コクコクと頷く僕。


 深緑の髪を整えて、スーツに着替えるフォトンだった。


 着替えシーンは簡略。


 僕はフォトンに背中を見せていたからね。


「もういいですよ」


 と言われてフォトンへ振り返ると、フォトンは喪服の男性スーツを着ていた。


 セミロングの後ろ髪をシュシュで一房に纏めている。


 美少女が男装すると言うのもおつなものである……いや、本人には言えないけどさ。


「で?」


 フォトンは問うてくる。


「どうやって脱出するんです?」


「壁を跳び越える」


 あっさりと僕は言った。


「正気ですか?」


「無論」


「高さ十メートルはありますよ?」


「大丈夫。それくらいなら跳び越えられると査定できました故」


 グッとサムズアップ。


 ていうかこっちでも長さの単位はメートルなのか……。


 もしかして僕が元いた世界とリンクしているんじゃあるまいな?


 ともあれ僕はオーラを二十キロメートル四方に広げると、両手で印を結んで、


「透遁の術」


 と姿を消す忍術を発動させる。


 さらに印を結び、


「分身の術」


 と呟いて僕とフォトンの幻を顕現させる。


「うわ……私とマサムネ様が……」


 精巧に出来ている僕とフォトンの幻を見てフォトンは驚く。


「魔術ですか」


「いや、忍術」


「何が違うんですか?」


「それは城から出たら教えるよ」


 そう言って僕は米俵でも担ぐようにフォトンを肩に担いで、それからフォトンの部屋のベランダに出る。


 四階にあるフォトンの部屋から地面までの高低差は十メートル強。


「まさか跳び下りる気じゃあ……」


「声は出さないでね。透遁の術は姿を消すけど匂いや音までは消せないから」


「……わかりました」


 そう肯定して口を引き結ぶフォトン。


 それをオーラで確認した後、僕はベランダから跳び下りた。


 四階のベランダから垂直に落下して、二階のベランダの柵を蹴って衝撃を緩和……結果として無事に地面へと着地した。


 それからフォトンを担ぎ終えると、フォトンの手を取って歩き出す。


「本当に見つからないんですか?」


 そう問うたのはフォトン。


「大丈夫だよ」


 僕は安心させるように言う。


「少なくとも二十キロ四方の人間に僕らは見えていないから……。正確には見えているけど知覚できないって方が正しいけどね」


「はあ」


 おどおどしながらフォトンは僕の手をギュッと握った。


 ちなみに夜の警戒をしている兵士たちと何度もすれ違ったけど、誰も彼も僕とフォトンに気付く様子は無かった。


 当たり前か。


 透遁の術を使っているのだから。


 そしてあっさりと僕とフォトンは王城を囲む城壁の傍へと到達したのだった。


「それで? これからどうするんです? 壁を跳び越えるといいましたけど、この壁を……ですか?」


「然り」


 またフォトンを肩に引っ掛ける僕。


 それから手に持ったクナイを全力で投擲して城壁に突き刺す。


 そして、


「よ……っと……!」


 僕はフォトンを担いだまま五メートル近くまでジャンプして、壁に突き刺さったクナイを足場にさらに五メートルだけジャンプする。


 それだけで城壁の壁を乗り越えるのだった。


「ふわ……本当に跳び越えちゃったよ……」


 フォトンが「ありえない」と口にする。


 まぁこれくらいならお茶の子さいさいだ。


 忍にとってはね。


「さて……」


 と呟いて、僕は城壁の天辺から跳び下りる。


 またしても落下の中間地点で壁を蹴って衝撃を和らげる。


 そうして僕とフォトンは城外へと脱出するのだった。


 僕はフォトンを肩からおろすと問うた。


「さて、この後どうする?」


「とりあえず宿を探しましょう。変化の術……でしたっけ? 別の人間に変化させる術があるんですよね?」


「そりゃあるけどさ」


 ともあれ変化の術を行使することが必要らしかった。


 そんなこんなで夜は更けていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] あれ?塀の向こうに運んでから取りに戻ったら良いのでは?一人でなら越えられるし... いや、1秒でも早く逃げたかったんだろう。うん、多分おそらくmaybe
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