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夷の国07

 航海は丸二日に及んだ。


 どちらかと云えば、


「たった二日で夷の国に着いた」


 という方が正しい認識だろう。


 流刑地であるはずの夷の国なのだからもうちょっとかかるものかと思っていたけど、案外大陸に近いらしい。


 泳いで流刑地を脱出する人間もいるんじゃなかろうか?


 知ったこっちゃないけど。


 奴隷商船を降りる。


 対価は金貨一枚。


 それでも夷の国の必然上外貨に頼るしかない状況を鑑みれば大金に相違ない。


 ちなみに僕らが賞金首だとわかればどうだろう。


 負ける気も殺される気も捕まる気もさらさらないから仮定でしかないけどさ。


 奴隷商船を降りて島国……夷の国に降り立つ。


 同時に僕はオーラを広げた。


 直径五里。


 結論。


「ん。まぁこんなものか」


 特に脅威を感じるようなことはなかった。


 道徳的な規準ではなく戦力的な基準で、である。


 夷の国としてはその存在意義は必要悪の立ち位置なのだろうけど人間が住まう以上は秩序を必要とする。


 略奪。


 殺人。


 強姦。


 無いとは言えないだろうけど、そこかしこで頻発すれば人が住むどころではなくなる。


 であるため紳士(?)協定のようなものもあるのだろう。


 もっとも、


「おい兄ちゃん。いい身分だな」


 僕たちには適応されないんだけど。


 先の言は奴隷商船から夷の国の港に降りたって、ならず者に絡まれた際の第一声だ。


 気持ちはわかる。


 綺麗なヒロインたちを侍らせればガラの悪いに人間にとっては餌も同然だろう。


 薬効煙をプカプカ。


「ほにゃら」


 精神が安定する。


「舐めてんのか?」


 ならず者が気後れせずに薬効煙を吸う僕に鋭い視線を送ってきた。


「そんな意図はありませんが」


「いい姉ちゃんたちだな」


 皮肉を言うならず者に、


「自慢のヒロインです」


 皮肉で返す僕。


「光栄ですマサムネ様」


「お兄様はお上手ですね」


「嬉しいな! お兄ちゃん!」


「ウーニャー!」


「マサムネちゃんさえよければ……」


 クインテットも問題視しなかった。


 これではならず者の立場が無い。


 知らないけどさ。


「おちょくってんのか?」


 やや不機嫌なならず者が刃物を取り出した。


 手入れのされていないナイフだ。


 血痕がついている。


 刺突はともあれ斬撃能力は怪しいものだ。


 というか刃物一本で僕たちに立ち向かうとは……。


「ご愁傷様」


 と思うに不可分は無い。


 ならず者が脅すように、


「殺されたくなかったら……」


 と述べている最中にターンと銃声が鳴った。


 クイックドロウ。


 無論ツナデである。


 M1911。


 コルトガバメント。


 別名ハンドキャノン。


 こっちの世界には銃刀法違反はないため持ち歩くのに不便はない。


 もっとも御家の都合上、元の世界でも所有している代物ではあったのだけど。


 僕たちの威力を知っている奴隷商船の船員たちが、絡んできたならず者の末路に十字を切った。


「まぁそうなるよね」


 至極当然。


 生き辛い国ではあろうけど引け目を感じるほどでもない。


 少なくとも夷の国そのものを敵に回しても勝ちきれる戦力だ。


 喧嘩を売る気はさらさらないけど、喧嘩を買う義理くらいは持ち合わせている。


 そもそも山賊や野盗、バウンティキラーが勝手に喧嘩を売ってくるので買っているだけだ。


 光の国の千人切りも喧嘩を売られた上での状況である。


 こっちから喧嘩を売ったことはあまり記憶に無い。


 基本的に平和主義者なのだ。


 僕らは。


「どの口が」


 という異論はあろうけども。


 ただ火の粉を振り払わずに火傷するのも面白くないというだけのことである。


 それが極端になると、


「障害」


 という結果に至るだけ。


 それは害悪ではあろうけど罪悪ではないと僕は思っている。


 本当に人が傷つくことが大切ならば人類はとっくに脱水症状で滅亡している。


 こっちの……巫女の創った世界の総人口はしらないけど、元の世界では七十億人の人間がいて四秒に一人は死者が出る。


 それにいちいち涙していてはきりがない。


 ので、大切なのは命ではなく人なのだ。


 大切な人が死ぬのが貴重なのであって人命そのものに価値はない。


 だから……ならず者の一人がツナデの拳銃によって負傷しようと僕の心はまったくもって動かなかった。


 お悔やみくらいはしてもいいけどね。


 一応殺さないだけの分別は持ち合わせている。


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