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光の国13

「しかし無限復元ね……。とんでもない能力だこと」


 なおフォトンが恐ろしいのはさらに戦術級の魔術を持っているということだろう。


 本人の言葉を信じれば……ではあるけど。


 まぁライト王が確保したくもあるか。


 フォトンがいれば毒殺も暗殺も恐くないのだから。


 逆に言えば外に出たがっているフォトンの一番の障害はライト王の威光と云うことになるね。


 ちなみに時は移って次の日。


 その昼。


 ダークは大した騎士らしく、それを撃破した僕は輪をかけて大した騎士と城内でささやかれた。


 限りなく不本意だけど人の口に閂をつけるわけにもいかない。


 まぁフォトンのバーサスの騎士として認めてもらえているという一点だけで、汲み取って損は無いだろう。


 で、ちなみに、


「よ……っと……」


 僕が何をしているかと言えばロッククライミングである。


 城の壁の凸凹に指を引っ掛けて屋根まで上っているのである。


 最上端まで上りきると、


「ふう」


 と一息つく。


 そして城を俯瞰の風景で見る。


 ライト王の住まう城の天辺からあたりを見渡したのだ。


 一言で定義するなら「バチカンの様だ」というのが僕の感想だった。


 城壁の内部はレンガによる道があったり、自然公園があったりと、城だけに完結するものではなかった。


 何か宗教めいた建物も見える。


 とにもかくにも小さな町程度の広さを王城は持っていた。


 それをグルリと高い壁が取り囲んでいる。


 壁の高さは目算で十メートルくらい。


 敵を攻めさせないためか……あるいはフォトンを逃がさないためか……。


 とまれ、


「僕一人なら十メートルくらいの壁なら余裕で跳べるけど……フォトンも一緒となると難しいなぁ……」


 フォトンを抱えて跳べる高さではない。


 そしておそらくフォトン自身は十メートルの壁は越えられないのだろう。


 そも越えられるのなら僕を召喚したりはしない。


「できるだけ穏便に光の国から出たい」


 それがフォトンの願いで……僕の役割だ。


 そういえば今まで考えてなかったけどあちらの世界はどうなっているのだろう?


「ツナデは慌てふためいているだろうな」


 くつくつと笑ってしまう。


 閑話休題。


「さて……」


 と呟いて僕は身に纏っているオーラを直径二十キロメートルくらいまで広げる。


 こちらの世界の住人は知らないだろうけど、あっちの世界には「五里霧中」という言葉がある。


 五里までもを覆い隠す霧の中という意味だ。


 忍術……正確には遁術だけどともあれ五里……約二十キロメートル四方を霧で覆い尽くす《五里霧の術》がその言葉の端である。


 すなわち直径二十キロメートルを自身のオーラの支配下に置く仙術だ。


 それと同じことが僕にも出来る。


 直径二十キロメートルまでオーラを広げて、その範囲内のありとあらゆる情報を得られるし、忍術を適応させることが出来うる。


 実際僕は今王城どころか王都の一部までもを自身の情報として取得している。


 市場に面白そうなモノがあった。


 城を出た暁には寄ってみることにしよう。


「ま、今は実験に終始しなきゃいけないんだけど……!」


 そう一人ごちて僕は両手で印を結んだ。


 密教などで伝わる両手で意味のある形を形成する儀式……忍術においてはその発動に必要な経過である。


 印を結び終えてポツリと呟く。


「……分身の術」


 次の瞬間、ある地点に幻としてのフォトンが生まれた。


 さらに僕は印を結ぶ。


「……透遁の術」


 また次の瞬間、本物のフォトンを認識できる人間は僕だけに限られ、その他の人間の視界には映らないように細工した。


 オーラで知覚して本物のフォトンが自室にいるのは確認済みだ。


 事情も通じているから本人が慌てることもないだろう。


 本物のフォトンを知覚できなくして、幻のフォトンを僕は動かす。


 どこまでも自然に……どこまでも屈託なく……幻のフォトンは城の東西南北にある門の一つ……商人が中に入るために開けられた南門へと歩み寄る。


 当然ライト王によって「フォトンを外に出すな」と命令を受けているだろう兵士たちはフォトンを止めようと近づいてくる。


 僕のオーラによって操作されたフォトンは兵士たちの制止の手をかいくぐった。


 そして商人がすれ違って南門を抜け出る。


 幻のフォトンは王城を抜け出て王都へと至る。


 同時に管楽器の汽笛が鳴った。


 フォトン……忍術で作った幻だけど……が逃げ出したため城は大混乱に陥った。


 本物のフォトンは自室にいるが、今は透遁の術によって僕以外の誰も見ること能わず。


 フォトンの部屋に駆け付けた兵士たちはフォトンが見えていないためフォトンが城から脱走したと信じて疑わなかった。


 ご苦労なことである。


 ある程度幻のフォトンを動かして城内の兵士や騎士たちの動きをオーラで感じ取り、どんな動きをとるのか確認した僕は分身の術と透遁の術を解いた。


 フォトンを追いかけていた兵士たちはフツリと消えた幻を目にし狐に騙されたような表情をしていた。


 その辺りは見えはせねどもオーラでわかる。


 そして透遁の術が解かれた本物のフォトンが自室で発見されて王城の混乱は収まるのだった。


「こりゃあ正面突破は無理か……な?」


 僕は城の天辺で一人ごちる。


 昼間ならともかく夜に城門が開くとも思えない。


 となればやはり方法は城壁を超えるしかない……か。


 せっかく異世界へと持ってきたクナイだけど此処で消費するはめになるとは。


 ま、いいんだけどさ。


 そして僕は城の天辺から跳び降りた。

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