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夷の国03

 嵐は過ぎ去った。


 が、船はまだ準備できていない。


 何故か?


 当たり前ではあるんだけど、


「そもそもにして何ゆえ我が船を夷の国に接岸させにゃならん?」


 に意見が収束する。


 犯罪者が送り込まれる地。


 ならず者の最後の砦。


 必然治安は悪かろう。


 いくら建設的国家運営が成り立っているとはいえ夷の国とは本来そうした場所だ。


 一般人が忌避するのは当然で。


 であるから足の用意は容易ではない。


 駄洒落じゃないよ。


 念のため。


 ではどうするか?


 威力営業で押し通したり金を積んで押し通したりすることも出来るけど、


「それも悪い」


 ということで却下。


 ので、第二案。


 夷の国とてまつりごとが行なわれている以上、外交はある。


 必然船による行き来は絶無ではない。


 そして夷の国は奴隷商を興しているらしい。


 夷の国に逃げ込んだ犯罪者から幾人かをピックアップし奴隷として各国に送る。


 異世界の文明は遅れているから飛行機もタンカーも無い。


 だから奴隷商船が必要となる。


 その奴隷商船が夷の国に帰るところに便乗させてもらおうという計画であった。


 第三案として羅針盤とトライデントで夷の国まで歩くというのもあるけど、これはものぐさな僕が却下。


 で、今いる港町に夷の国の奴隷商船が来るまで暇潰しをすることになり、水着も全員持っているということで季節も季節だし海水浴と相成った。


 僕とフィリア以外。


 フォトンとツナデは器用に泳ぎ、イナフとウーニャーが四苦八苦。


 そもそもにしてウーニャー(人型)が泳ぐというのもおかしな話なんだけどね。


 キャッキャと騒ぐカルテットを傍目に僕とフィリアは『海面に座って』いた。


 僕は海面に胡坐をかいて、釣竿を持って糸を垂らしている。


 海釣りだ。


 そして僕の隣にトライデントを持ったフィリアが淑女的に座っている。


 要するにトライデントを用いて水分に干渉……大気の重圧と等質の反発力を海面に発生させることで海面の一部に「地に足をつける」状態を作り出しているのだ。


 この力と羅針盤があれば夷の国まで行けるのだけど以下略。


「くあ……」


 欠伸を一つ。


 僕はボーっとしながら釣竿を握ってのんべんだらり。


 個人的には海魚より川魚の方が好みなのだけど無茶を言っても始まらない。


 釣餌はフィリアがトライデントで海中の虫やら小エビやら小魚やらを捕まえて補給してくれるため事欠かなかった。


 有難い限りである。


「ねえマサムネちゃん?」


 トライデントを肩にかけて僕の海釣りに付き合っているフィリアが僕を呼ぶ。


「何?」


「お姉さんのこと好き?」


「好意的ではあるね」


 言いつつも釣竿から目を離さない。


「ここなら他の子たちにも見つからないよ?」


 何が?


 ちなみに海水浴を楽しんでいるフォトンたちと海釣りをしている僕たちとでは多少なりとも今は距離が離れている。


「情事」


「ですか」


「お姉さんの体を好きにしていいのよ?」


「気が向いたらね」


「ねぇ? 前から思ってたんだけどマサムネちゃんは女の子に興味は無いの?」


「そんなことはござらんが……」


「だって女の子を侍らせてるのに浮いた話の一つも無いじゃない」


「まぁ簡単に手を出せば女の子の有難味が擦り減るからね」


「童貞」


 反論の余地はござんせんが。


「聞くけどお姉さんたちの中で一番好きなのは?」


「ウーニャー」


 間髪入れず答えた。


「ロリコン」


「というより一番角が立たないんでね」


「じゃあウーニャーちゃん抜きで」


「うーん……」


 多分だけど、


「ツナデかな?」


「シスコン?」


 血は繋がってないけどね。


「ツナデは僕の味方だから」


「マサムネちゃんの周りの女の子は皆マサムネちゃんの味方よ?」


「重ねた年月の度合いが違う」


「どういうこと?」


「秘密」


「…………」


「少なくともツナデと決着をつけない限りにおいて僕が他の女の子を抱く予定はないよ」


「童貞」


 さいです。


「ちなみにお姉さんの序列は?」


「イナフと同着」


「あんまり高い位置じゃなさそうね」


 まぁウーニャー、ツナデ、フォトンの次にイナフとフィリアが同着だ。


 排斥された過去を持っている分イナフの方に同情を寄せる余地があるけれども、それをこの場で言うほど僕は勇者じゃない。


「お姉さんは妾でもいいわよ?」


「要熟考だね」


 つまらなそうに僕は言った。


 クイクイと釣竿が主張する。


 ピッと釣竿を持ち上げると海魚が釣れるのだった。


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