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夷の国01

 そう云えば異世界に来てから海って初めて?


 ザザーンとよせてはかえす波……というには風情が無い。


「…………」


 薬効煙をプカプカ。


 遥か遠い水平線。


 此度の向かう先だ。


 嵐が天を引き裂き海をあざ笑う。


 夷の国。


 それがこれから僕たちの向かう国の名だ。


「で、どういう国なの?」


 ちなみに形の国でラセンの足取りはつかめなかった。


 まぁ元より観光旅行優先だから落ち込んだりはしないんだけども。


「一言で言ってしまえば流刑地です」


「流刑地……」


「つまり犯罪者の掃き溜めと云うことですか?」


 これはツナデ。


 トランプを切りながら。


「ですね」


 コックリ頷くフォトン。


「それって国って言えるの!?」


 元気爆発明朗快活にイナフ。


「私も詳しく知っているわけではありませんが……」


 と前置きして、


「元々は流刑地であったところに犯罪者を大量に流していたら、その島で犯罪者たちによる建設的国家運営が行われるようになって今では犯罪者が逃げる先になっている……とのことです」


「犯罪者による国家運営ね」


 人は二人いれば対立して三人いれば派閥が出来る。


 元より人が集まればその集合体が有機的国家運営の元になるのはわからない話ではなかった。


「詳しいことは夷の国に行ってみないことには何とも……」


 おとがいに指を添えて困惑するフォトン。


「うーん」


 とこれはフィリア。


 唸っている。


 というより思惑しているようだった。


 水色の髪が不安に揺れる。


「つまり犯罪者の巣窟なのよね? 大丈夫なの?」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 僕とフォトンとツナデとイナフがジト目でフィリアを見た。


 ウーニャー?


 寝てます。


「な、何? お姉さん何かおかしなこと言った?」


「国家級戦力を持つフィリアがそれを言う?」


「お姉さんのアドバンテージは大破壊であって先手必勝ではないのよ?」


「…………」


 理屈はわかるけどさ。


「なんならその……夷の国? 海に沈めます?」


 ムー大陸か。


 遥か神代の時代。


 海の大神ポセイドン。


 少なくとも巫女が日本人なら俗物的なイメージだろう。


 その持つトライデントは海を操り大陸を揺さぶる。


 そしてそのトライデントをフィリアは持っているのだ。


 まさに戦略兵器の名に恥じない威力の神器。


 で、あるが故に最強の一角に君臨している。


 実際相性の問題があったとはいえ赤竜王をくだしているのだから。


「お兄様に傷の一つでも付けば大海に没させるのも悪い選択ではありませんが」


 ツナデはこれを真顔で言うのである。


「でもならず者たちの吹き溜まりよ?」


「お兄様が後れを取るならば……という話です」


 ツナデがきっていたトランプを配る。


 遊んでいるのは大貧民。


 うげ。


 良いカードとはとても言えない。


 で、僕らが何をしているかと言えば宿屋に泊って暇潰し。


 夷の国は元は(今もだけど)流刑地であるため必然的に島国だ。


 そのため入国には船が要る。


 外は嵐。


 波高鳴って暴風を呼ぶ。


 つまり嵐によって観光旅行を足止めされている僕たちは浜辺の一等地の宿屋に泊っているのだった。


 本来なら海水浴をしたりベランダから海を眺めたりと云うのが鉄板なんだろうけど、生憎と嵐のためそれもままならない。


 当然船の出航なぞ以ての外。


 そんなわけで嵐を宿屋で回避して、トランプに興じる僕たちだった。


「でもさ」


 八のカードをきりながら僕。


「そんなところブラッディレインがいるとも思えないけど……」


 そもそも僕にとっては異世界観光旅行だけど、フォトンはフォトンで理由があって旅をしているのだ。


「気にしなくて構いませんよ」


 対するフォトンの言葉はあっさりしたモノ。


「どうせ時間はたっぷりあります」


 五のカードを切りながらフォトン。


「単に余興と云うか……そんなものです」


 そんなものですか。


「なにより光の国で千人切りを行なったマサムネ様にとってはならず者の千人や万人……ものの数ではないでしょう?」


「信頼だけ有難く頂戴するよ」


 他に言い様も無い。


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