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形の国27

 ドール王の好意によって馬車で形の国を南下する僕たちだった。


「ウーニャー……」


「あう……」


 で、当然のようにウーニャーとフィリアはオーラ酔い。


 ウーニャーは平衡感覚が無くなっているため僕の頭上にはいない。


 馬車の屋内の床に突っ伏していた。


 だが、感覚的なところでオーラの有無を感じ取れているらしいからオーラそのものを知覚するのも遠い話じゃないだろう。


 僕はと言えば、


「…………」


 薬効煙をプカプカ。


 これはまぁいつも通り。


 もっとも気楽に薬効煙を吸っているだけではなく、オーラを広げて索敵もしているのだけど。


 半径一キロメートル。


 大体全力の十分の一の範囲だ。


 五里霧の術を使えば面倒は無いんだけど、継続的に敵を躱すという意味では効率的ではない。


 そもそも遁術は遁走……逃げるための術であるから、


「霧遁の術」


「分身の術」


「変化の術」


「雪遁の術」


 等々、感覚の齟齬や誤認させるのが本来は正しい使い方である。


「火遁の術」


「雷遁の術」


「刃遁の術」


 等々、ショックを受けさせる術も逃げるにあたっての敵の足止めのために他ならない。


 つまり僕らが野盗山賊の類に使う遁術は思いっきり使い方を間違えているのである。


 負い目を持っているわけでも危惧しているわけでもないけどね。


「…………」


 薬効煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 で、行く道の先に人間を捉えていた。


 生憎とオブジェクトとしてしか認識できていないけど、どうやら野盗らしい。


 向こうはこっちに気付いていない。


 数は五人。


 手に持つは鉈やら斧やら。


「零細っぽいね」


 というのが遠慮ない感想だった。


 吸った煙をフーッと吐く。


「ツナデ」


「はいな」


「イナフ」


「はいな」


「野盗が五人。約一キロ先」


「……っ」


 フォトンが目を見開いたけど、そこまでのこってもない。


「武器は?」


「斧や鉈。多分網を張っている……つもりなんだろうね」


 同情してしまう。


 よりによって超戦略級の戦力相手に脅しをかけねばならないのだから。


 とんだ貧乏くじである。


「…………」


 薬効煙を吸う。


 当人が良かれと思ってやっていることだから意見しにくいんだけど、形の国で野盗をしてもしょうがないと思うんだ。


 まぁ裕福な国では野盗同士の縄張りがあるという事もフォトンやフィリアに聞いてはいるんだけど。


 中々世知辛い世の中である。


 哀悼の意を捧げたい。


 煙を吐く。


「そろそろ五百メートル範囲内かな?」


 僕がそう言うとツナデとイナフがオーラを広げた。


 僕とツナデとイナフのオーラが野盗を捉える。


 両手で複雑な印を結び、ツナデとイナフが術名を発した。


「刃遁の術」


「その身を焼け」


 オーラ越しにツナデとイナフと野盗が意識の通信を行う。


 一方通行だけどね。


 自身の脳から相手の脳に直接情報を注射するのだ。


 野盗たちは自身らの身に何が起こったのかさえ分からずにショックで気絶した。


 これくらいは……まぁ。


「ふわ~」


 これはオーラを広げていたフォトン。


 認識くらいは出来るだろう。


 その手際に感心していた。


 僕にしてみれば必然の結果なんだけど。


 プカプカ。


「ウーニャー……」


「あう……」


 オーラ酔いしている一人と一匹はそんな些事には興味なし。


 これも必然だ。


 そんなこんなで森の動物や昆虫たちの餌と相成るかもしれない野盗たちのことは忘れて、僕は言った。


「トランプでもしない?」


「いいですね」


 フォトンが真っ先に食いついた。


 野盗山賊等が襲ってくればハプニングにもなろうけど、僕らの能力はハプニングさえも未然に防いでしまう。


 結論としてトランプは重宝するのだった。


 フォトンが四次元ポケットからトランプを取り出す。


 厚紙製のソレだ。


 いまだにプラスチックが光闇木火土金水のどの属性か見切れていない。


「ウーニャー……」


「あう……」


 オーラ酔いしている一人と一匹は置いといて僕らはトランプに興じた。


 次の国については……、


「ま」


 トランプついでにフォトンに聞くさ。


これにて「形の国」編、終了です。

如何でしたでしょう?

面白く思っていただければ幸いなのですが……。

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