形の国24
で、どうなったかというと、
「あー」
「うえ」
形の国の王城に招かれたのだった。
色の氾濫は城内も同じだった。
ペンキでもぶちまけたかのような色づかいだ。
僕はツナデの手を握ってやった。
フォトンによるおもちゃの人間への復元は一旦中断。
王命によって。
……王様って便利ね。
成りたいとは露ほども思わないんだけど。
僕たち一行を城に招いたのは、先ほど教会に突撃したドール王である。
城の内装に対して思うところは無いのか……それとも慣れてしまっているのか……ともあれ平然としている。
「……ウーニャー」
あのウーニャーでさえ気圧されているというのに。
そして僕たちはドール王の私室へ招かれた。
てっきり謁見の間に招かれると思っていたからこれは予想外。
当然護衛はついたけど、
「…………」
僕たち相手にどこまでやれるか甚だしく疑問だ。
そもそもおもちゃが王の護衛って……。
正直なところ哀悼の意を表明したくなりさえする。
しないけどね。
というか城に入ってからこっちおもちゃは見かけても人間を見かけないのはどういうことでしょう?
ドール王は使用人……おもちゃである……をベルで呼ぶと、
「お茶の用意を」
と命じ、
「えーと……そちらのドラゴンは……」
「ウーニャー! いらない!」
「では六人分を」
と指示する。
おもちゃの使用人はタッタカと部屋から出ていってお茶の準備をしてまた戻ってきた。
手際よくウーニャーと護衛以外のお茶を淹れて振る舞う。
そして一礼して部屋を出ていった。
「なんだかな」
おもちゃにお茶の機微がわかるのだろうか?
そんなことを思い一口。
「へえ」
僕は前言(前思念?)を撤回する。
紅茶は大したものだった。
薫り高く味わい深い。
文句のつけようも無かった。
「お茶……どうですか?」
ドール王がおずおずと聞いてくる。
「いい仕事です」
フォトンが賛美。
「美味しいですよ」
ツナデが肯定。
「しっかりしてる」
イナフが論評。
「うん。良い味じゃない」
フィリアが絶賛。
「なら良かったです」
ホッとしたようにドール王。
それからおどおどする。
なんだかね。
安定しないねドール王は。
「…………」
ジーッとドール王を観察する。
こっちの視線に気づいたドール王。
しかして僕は視線を外さない。
「…………」
「……あう」
「…………」
「……あうう」
「…………」
「……あううう」
頬を桃色に染めて狼狽えるドール王だった。
髪の色と同じ顔色になる。
グッとくるのは僕が男の子である証だ。
可愛い子は可愛い。
甘やかしたくなる。
まして幼いドール王は庇護欲をそそる。
抱きしめたい。
言わないけどね。
仮に言ったら僕の連れが容赦なく消すだろう。
それは誰のためにもならない。
「で」
紅茶を飲みながら僕が問う。
「何でおもちゃたちへの復元行為を停止させたの?」
「それは私も気になりました」
「ツナデも」
「イナフも」
「ウーニャー!」
「お姉さんもね」
「あう……」
と顔を真っ赤にするドール王。
「い、言っても笑いませんか……?」
「場合によっては大爆笑」
グッとサムズアップ。
「では言えません……」
「冗談だよ」
「……本当に?」
「自信は無いけど」
どこまでも正直な僕だった。
「でもソレを言わないと先に進まないんじゃない?」
「あう……ですね」
そしてドール王はポツポツと語りだした。