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形の国23

「しかして」


 剣呑な眼はそのままに、


「人を傷つけるのは教義に反します故……」


 ぼんやりと執行者は言った。


「おもちゃたちも人間の勘定に入るの?」


「ええ」


 あっさりと頷かれる。


「それが神の巫女の神託です故」


「巫女……ね……」


 あの子が創った世界だ。


 とやかく言う権利は僕には無いのだろう。


「ウーニャー……」


 僕の頭上のウーニャーも困っているようだった。


「ウーニャー。薙ぎ払おうか?」


「まぁ今なら教会の扉の向こうに目的のおもちゃたちが集まっているだろうから都合はいいけどね……」


 半分は冗談だ。


 かといってもみくちゃにされるってのもな……。


「要するに」


 とこれは執行者。


「大挙して押し寄せられて困っている……というわけですよね?」


「言ってしまえばね」


 プカプカ。


「ならば私に任せてください」


 ありがたい。


「で、どうするの?」


 これはイナフ。


「順番を作って順列に対応させるよう教会の威力にかけて命じます」


「はぁ」


 ポカンとしたのはフィリア。


「一人一人教会に入れてフォトン様とミーティングし、人形から人間に戻すべきか判断すればいいのでは?」


「ウーニャー……ウーニャーのドラゴンブレスで薙ぎ払った方が良くない?」


「それは最後の手段にしてほしいです。たしかにドラゴン魔術も魔術ではありますが傷つけるより先にするべきことがありますから」


「ウーニャー」


 そんなわけで、


「では希望者は並んでください」


 執行者は教会を取り囲んでいるおもちゃたちを一列に並べるのだった。


「焦らないでください。順番通りに並んでください。これに反するものは聖釘にて制裁対象になります」


 ちなみにフォトンは簡易テーブルと簡易椅子に着いていた。


 教会前に並んだ、


「人間に戻りたい」


 と主張するおもちゃたちと一体一体面をあわせる。


 僕とツナデとイナフとウーニャーとフィリアはその間教会に並べられた椅子に座って成り行きを見守っていた。


 薬効煙を吸って吐く。


 予想できたことだけど、やはり、


「後天的に致命的障害を持った」


 が故のおもちゃたちが大半だった。


「人間に戻りたい」


「人間としての矜持を取り戻したい」


「無限復元が全てを治すなら」


「人間に戻っても障害に苦しむことさえない」


 そんな意見が大半だったのだ。


 後にフォトンは言ったものだ。


「私は便利な医者じゃないんですが……」


 と。


「あながち間違ってないでしょ」


 と僕が言うと、


「……むぅ」


 と唇を尖らせた。


 ともあれ、問題も起きた。


「わしを人に戻してくれ」


 自称老人がそう懇願してきたのだ。


 西洋人形風のおもちゃである。


「しかして……」


 困惑するフォトン。


「あうあう」


 とたじろいで僕を見やる。


 僕は肩をすくめるのみだ。


 意訳、


「好きにすれば?」


 である。


「でも無限復元では若返らせることは出来ないんですよ? 老衰を止めるのは私に触れている一時の間だけで、仮にあなたが老人ならば遅くない段階で老死することになりますがその辺は如何に?」


「構わん」


 おー。


 格好いい。


「家族の意見は……?」


「わしの体だ。他人の意見なぞどうでもよかろう?」


「そういうわけにも……」


 少なくとも老人の……西洋人形の家族がソレを受け入れられるかは別の問題だ。


 薬効煙をプカプカ。


「なんだかなぁ……」


 と思っていると、


「その復元ちょっと待ったー!」


 と幼い声が教会に響いた。


 声同様に幼い少女だ。


 外見年齢的にはイナフとウーニャーの間だろうか。


 やけに上品な光沢を演出するシルクの絹を着ていた。


 恵まれた出自という僕の観察は間違っていなかった。


「ドール陛下……」


 西洋人形が少女の名を呼ぶ。


 幼い女の子は涙目だった。


「え? ドール王?」


 マジで?


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