形の国17
そんなわけで、
「ほふ」
形の国の大都市……その喫茶店でお茶をする僕たちだった。
僕らが侵入した事実は電撃的に都市に伝播する。
とはいえこっちにしてみればどうでもいい話であって、僕らはお茶を楽しんだ。
テラス席は注目を集めるので屋内だ。
店員さんたちの表情……というか態度は固かった。
仕方ないよね。
刃物……というよりアトミック兵器を喉元につきつけられているも同然なのだ。
威嚇も良し悪しなんだけど、此度は仕方ない。
牽制しないとこっちが殺される。
まぁフォトンの無限復元があるから最悪の事態は回避できるだろうけど、僕に傷の一つでも付いたらこの街が焦土になりかねない。
それをわかっているため都市側でも手が出せないのだろう。
喫茶店の店員は人間とおもちゃが五対五だったけど僕たちに応対したのは人間の店員だけだった。
そりゃそうだろう。
うっかりフォトンと袖振り合えば、
「はい人間」
である。
畏怖や恐怖で捉えられるのも必然。
「それでこれからどうする?」
アイスティーを飲みながら僕。
「なんだかすみません。私のせいで……」
恐縮するフォトン。
ドヨーンとしていた。
僕はニッコリ笑ってやった。
クシャクシャとフォトンの髪を撫ぜる。
「大丈夫だよ。気にしてないから」
「でも動くぬいぐるみをモフりたいんですよね?」
「だからってフォトンにあたってもしょうがないでしょ?」
「マサムネ様……」
「ともあれ今後の方針を練ろう」
「優しいですねマサムネ様は」
「わはは。恐れ入ったか」
「はいな」
うん。
「やっぱりフォトンは笑ってる方が魅力的だよ?」
「ふえ……」
言葉を失う。
沈黙。
後の爆発。
「ふわわっ!?」
真っ赤になったフォトンは大層可愛らしかった。
「お兄様……っ」
「お兄ちゃん……っ」
「パパ……っ」
「マサムネちゃん……っ」
嫉妬に狂う他四人。
相手にしないけどね。
「で」
僕はカップを受け皿に戻す。
「フォトン」
「はひ?」
噛んだ。
可愛い可愛い。
いまだ顔は赤いままだ。
「王都に行くんでしょ?」
「ですね」
「ラセンの足取りを追うため」
「ですね」
「でもラセンがこっちに来てるなら噂になってもしょうがない……というか必然だと思うんだけどな」
「ですかね」
何せ無限復元の使い手だ。
フォトンがこれだけ警戒されているのだから殺人狂のブラッディレインがいれば形の国は大混乱になっていてもおかしくはない。
「基本的にラセンは……師匠は……殺人衝動が治まっている内は人嫌いです故」
「ふぅん?」
納得できるようなできないような……。
閑話休題。
「王都までは馬車借りる?」
「それならクエストを受け付けませんか?」
「クエスト……あー……」
クエストね。
そう言えば僕ら冒険者だっけ。
ライセンスは持ってないけど。
お茶を一口。
「ほふ」
吐息を一つ。
「じゃあさっそく行く?」
「ですね」
「そういうことでいい?」
他四人……と云ってもウーニャーは僕の頭の上にいるため不可能だけど……に視線を振る。
「…………」
少女たちはジト目だった。
「何さ?」
「それを言わせるんですか?」
「勘弁」
ハンズアップ。
降参。