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形の国15

「悪事千里を走るって言葉……知ってる?」


「辞書の記載程度でしたら」


 だろうね。


 僕は曇り空に向かってフーッと煙を吐いた。


 おなじみ薬効煙である。


 プカプカと嗜みながら、


「さて、どうしよう?」


 まさしく、


「悪事千里を走る」


 の状況だ。


 商人さんに大都市まで連れてもらっていって、亜人対策だろう外壁にグルリと周囲を囲まれて行き来には門番の承認が必要だった。


 商人は関税を払ってパスした。


 感謝とともに街に呑みこまれる。


 で、僕ら。


 僕ことマサムネ……、


「……は除外するとして」


 バーサスのフォトン。


 義妹のツナデ。


 ハーフエルフのイナフ。


 僕の頭上に陣取っているドラゴンのウーニャー。


 ミス年上のフィリア。


 このクインテットはあまりに人目を引く。


 悪事……本当は悪事じゃないけど……千里を走り大都市に、


「無限復元」


「セブンゾール」


「光の国の大魔術師」


「フォトンが来たぞ」


「おもちゃたちに触れたら人間に再変換されるらしいぞ」


「緑髪のおさげと黒髪ロングと金髪碧眼と虹色ドラゴンと水色レディのパーティが来たら中に入れるな」


 という具合にまで相成っていた。


 僕らが何をしたんだよぅ。


 やるせない思いを胸に、


「…………」


 スーッと薬効煙を吸ってフーッと吐く。


 出直すしかあるまい。


 薬効煙を地面に落として踏みにじり鎮火。


 そして門番の見えないところまで距離を離し、


「アレしかないよね」


 僕が言う。


「お兄様の言うとおりアレしかありません」


 ツナデが同意してくれる。


「他に方法は無いですね」


 実際に体験したことのあるフォトンが妥協。


「となるとやっぱりお兄ちゃん?」


 当然の言たるイナフ。


 他にあるまいな。


「どゆこと?」


 これはウーニャーとフィリア。


 わからなくて当然だ。


 説明が必要だろう。


「変装をするんだよ」


「ウーニャー?」


「どうやって?」


「遁術で」


「ウーニャー……」


「遁術で……」


 然り。


「百聞は一見に如かず」


 僕はオーラを広げた。


「「っ!」」


 違和感を覚えたのだろう。


 ウーニャーは僕の頭上で警戒するように震えて、フィリアは露骨に警戒の表情をしていたのだった。


 うん。


 いい感受性だ。


 これならこの国を出る頃にはウーニャーもフィリアもオーラを捉えられるようになるだろう。


 閑話休題。


 半径一キロほどにオーラを展開する僕。


 そして複雑な印を結んで術名を発す。


「変化の術」


 次の瞬間、


「ウーニャー!?」


「え!?」


 ウーニャーとフィリアが驚いた。


 さもあろう。


 ここにいる全員の外見が丸ごと変化したのだから。


 僕は魔術で薬効煙を生み出し、同じく魔術で火を点ける。


 スーッと。


 フーッと。


 ちなみに僕はお髭の素敵なダンディに。


 フォトンとツナデとイナフとフィリアは派手な服装の踊り子に。


 それぞれ変化するのだった。


 無論のこと髪の色も肌の色も完全変化で……もはや別人。


 もっとも遁術で脳を誤認させているだけのためオーラを感じ取れる僕とフォトンとツナデとイナフはいつも通りの面々に見えているんだけどね。


 ウーニャー?


 ウーニャーは僕の頭上に乗っているためシルクハットになってもらいました。


 そして再度形の国の大都市の門を叩く。


 門番は鼻の下を伸ばしながら踊り子集団……僕らのことである……を街の中に入れてくれるのだった。


 あ、ちなみに体型は変えてないよ?


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