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形の国11

「というわけで遁術を覚える前にオーラについて説明しなきゃいけないんだけど……」


 馬車はえっちらおっちら。


 なんとなく御者である商人さんさえ聞き耳を立てているような気がしながら講義を開始する。


「オーラっていうのは第六感のことを指すんだ」


「シックスセンスってこと?」


「間違ってはいないね」


 コクリと首肯。


「正確には感覚の延長。それがオーラ」


「感覚の延長……」


 フィリアの言葉に、


「然りっす!」


 イナフが頷く。


「脳が脳として世界を確認するための第六の感覚。ソレを以てオーラと云うんだ」


「ウーニャー!」


「一番近い感覚は触覚にあたるかな?」


「ですね」


 ツナデが同意してくれる。


「触覚を広げるってこと?」


 フィリアの言に、


「誤解を恐れず言えば、ですが」


 曖昧なツナデ。


 そも当然だ。


 あくまで触覚と云うのは代弁だ。


 脳がオーラの範囲内のマテリアル体を把握するのであって、そこに熱や痛みと云った「触覚本来の能力」は加味されない。


 ある意味で、


「炎は察知できても高熱を感知することはない」


 というメリットも存在するけど、


「本質を突く情報を得るのが難しい」


 という欠陥も確かに存在するのだから。


「オーラが感知するのはクオリアによる情報のみだからね」


 そんな僕の言葉に、



「ウーニャー! クオリアって何!?」


「…………」


 まぁ知りえるはずもないか。


 フィリアを見ると、


「?」


 こちらも首を捻っていた。


 僕は嘆息すると、


「志向性とともに心のあり方を特徴づける概念のこと」


 端的に説明した。


「もう少し詳しく」


 だろうね。


「例えば綺麗な花を見て美しいと思う。楽器の演奏を聴いて耳に心地よいと思う。赤色を見て赤いと思う。そんな自意識を自意識足らしめている感覚のことを指してクオリアと呼ぶんだよ」


「ただしそれはあくまで脳だけに完結するはずなんです」


 ツナデの援護射撃。


「当然ね」


 フィリアは段々と理解し始めたようであった。


 ウーニャーは……どうだろう?


「その脳の認識を広げる。生命の持つ五感とは全く異にする第六の感覚。質料を正しく認識する感覚。その機能拡張を以てオーラと呼ぶんです」


「ちなみに行使には生命力を削るために気やチャクラ……あるいは小宇宙とも呼ばれているけどね」


 肩をすくめる。


 ああ。


 薬効煙があれば決まっていたのに。


「生命力……」


「ん。正確には体内エネルギーって言った方が近いかな? 要するに気力だよ」


「ふむ……」


 神妙に頷かれる。


「それで?」


「とは?」


「どうやってオーラを感じ取ればいいんですか?」


「慣れ」


 僕の答えは簡潔極まった。


「慣れですか」


「うん」


 他に言い様も無いんだけど。


「相手のオーラを感じ取るところから始めなきゃいけないね」


「ですね」


「だね!」


 ツナデとイナフの肯定も当然だろう。


「仮にもオーラ使いが四人もいるんだ。それに交互にオーラを展開せしめている。そこに意識を集中させることから始めようか」


「そんなことで覚えられるの?」


「というか他に覚えようがないね」


 断言。


「とりあえずイナフ」


「はーい。なぁにお兄ちゃん?」


「断続的にオーラの展開を行なってウーニャーとフィリアをオーラ酔いにさせて」


「わかったよ!」


「ウーニャー?」


「オーラ酔い……ですか?」


「そ」


 そして五分後。


「ウーニャー……」


「何だか微妙に不快を催してきたんですけど……」


「ん。五分で悟れるなら優秀だね」


 満足げに頷いてやる。


「これがオーラ酔いですか? 馬車酔いじゃなく?」


 その可能性もあったね……。


「さぁてねぇ」


 そこまで僕の関知する所じゃない。


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