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形(ぎょう)の国01

「どうしてこうも……」


 僕はこめかみを指先で叩いた。


「…………」


 神の国を出た僕らは山道を歩いていた。


 此度の国は半島国家らしく、国境は必然山となる。


 だからってさ。


「真っ正直に山賊が現れるのもどうかと……」


 ベタだ。


 というより潰しても潰しても現れる山賊は何か因果でもあるのだろうか。


 人を襲う労力を勤労に向ければもうちょっと生産的で、なおかつ万人に認められるだろうに……。


 チラリと僕の……正確には違うのだが……旅のお供である女の子たちを見やる。


 第一、フォトン。


 深緑の髪のおさげを弄っていた。


 服装はスーツ。


 凛として美少女であるフォトンに良く似合っている。


 実際の年齢はともかく。


 瞳に映るのは楽観。


 ある種の残酷ささえあるのだが、まぁそういうものだと理解してもらう他ない。


 これについては理由があるのだが今は割愛。


 第二、ツナデ。


 愛銃であるコルトガバメントを構えている。


 黒く長い髪はしなやかささえあり、月光にて輝かしい。


 こちらも美少女でありスーツ姿だ。


 もっとも異世界に許された美貌なのだが。


 僕の命令一つでコルトガバメントは火を噴くだろう。


 なおかつ狙いが外れるという事もあるまい。


 第三、イナフ。


 金髪碧眼。


 ラフな出で立ち。


 外見年齢的には絶対的に幼女に見えるが僕より年上。


 長寿の種族……エルフである。


 つまり合法ロリ。


 正確にはハーフエルフなのだが長寿であることに変わりはない。


 短い耳と碧い瞳を持つ人ともエルフとも異する存在。


 当人はどうでも周囲にしてみれば、


「人間ではないから売買されるに都合がよく、エルフでないから人間同様に差別されて当然だ」


 という業を背負っている。


 もっとも僕らと旅をすることでそれらの排斥からは今のところ逃れられているが。


 第四、ウーニャー。


 虹色の髪と瞳を持つ少女。


 今はゴスロリを着ている少女……というより幼女の姿だが、これは本質をついてはいない。


 本来のウーニャーはドラゴンなのである。


 それもこの世界を構成する光、闇、木、火、土、金、水の全七属性を併せ持つ七色竜王……またの名を真竜王と呼ばれるドラゴンたちの王である。


 可愛い外見に反して暴れ出したらもっとも止めるのが困難な奴。


 フォトンと……それから後述するフィリアとタメを張る。


 まぁいいんだけどさ。


 第五、フィリア。


 水流を思わせる水色の髪の美女。


 旅のお供の中で唯一僕より外見年齢が高い女性だ。


 顔立ち整っており胸も豊満。


 ミス年上。


 着ている服は水色のカクテルドレス。


 だが趣味は悪いらしく、僕に惚れこんでいるという……。


 それは何もフィリアに限った話じゃないんだけど。


 手に持つは三又の槍。


 異世界ではポセイドンが持つとされる神器だ。


 こちらでも限りなく等しい出自だが、それについては「神の国」で納得させられた。


 水を自在に操り、時に天を、時に地を、それぞれ鳴動させうる神がかり的な圧倒的な力を持つ。


 正直なところ一国と争っても遅れはとるまい。


 重ね重ねそれは何もフィリアに限った話じゃないんだけど。


「…………」


 一人として凡人はいない。


 誰も彼もが驚異的な威力を有している。


「どうしたものか……」


 僕がぼやくのも必然だった。


「ひゃは! 兄ちゃんビビッてる?」


 どうやって穏便にこの場を切り抜けるか考えている僕の態度を誤解した山賊の一人が挑発した。


 そして地に伏した。


 ツナデのコルトガバメントから発射された弾丸が山賊の大腿を撃ち貫いたのだ。


「っ!」


 山賊に動揺が走る。


 さもあろう。


 そもそもこちらの世界は「ファンタジー」であり、科学が発展していない。


 巫女に確認したから真実であり事実だ。


 そこに「未来の技術の粋」である拳銃M1911が現れたのだ。


 理解不能でも全くおかしくはない。


 ただその威力は察したらしく、山賊たちは腰が引けていた。


 二十一人……ツナデが一人減らしたので二十人か……はろくに手入れもされていない武器を構えながら未知なる兵器に気圧されているのだった。


 だが未知なる兵器はツナデのコルトガバメントだけではない。


 僕とツナデとイナフの遁術もそうであろうし、フィリアのトライデントもそうであろう。


 とまれ、


「はぁ」


 嘆息一つ。


 抵抗の意思は汲み取ってもらえたらしい。


「てめ……!」


 それ以上山賊の一人は言えなかった。


 ツナデの拳銃で撃たれたからだ。


 それを皮切りに僕たちと山賊たちの間で緊張感が走った。


 一人と一匹がわけあって参戦できないが戦力としては十分すぎる。


 山賊の更生に一分もいらなかった。


 南無。


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