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神の国29

 天気は晴れ。


 今日も僕らは張り切ってこの世界の冒険を続けている。


 薬効煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 耳に聞こえるのは川のせせらぎ。


 僕は川に向かって釣り糸を垂らし自身は釣竿を握っていた。


 僕の頭の上にはいつものようにウーニャーが。


 あの後。


 つまりこの異世界の成り立ちについて巫女と議論した後、巫女に引き留められて神都で一泊し、巫女に今までの冒険譚を語り聞かせることになった。


 で。


 神都には足を踏み入れたし巫女には会えたしで神の国の観光は最大限に楽しんだと言えるだろう。


 今はブラッディレインが向かったかもしれない神の国の南に向かって冒険している最中である。


 途中、川を見つけて一休み。


 僕は釣り糸を川に向かって垂らしているというわけだ。


「ウーニャー!」


 ウーニャーがペシペシと僕の後頭部を叩く。


「なぁにウーニャー?」


「パパの世界って楽しい?」


 エヴェレット解釈によって分岐した僕の元いた世界の事だろう。


 苦笑する他ない。


「地域によって違うよ」


「ウーニャー?」


「僕のいた国は恵まれていたけど……別の国ともなれば戦争や飢餓やテロリズムが横行することもあったしね」


「ウーニャー……」


「テレビやネットや携帯電話は見せてあげたいね」


「テレビ? ネット? 携帯電話?」


「うん」


 僕はピッと竿を吊り上げる。


 川魚が釣り上がる。


 それをフォトンに渡して、また釣り糸を川に垂らす。


「ウーニャー! 何それ!」


「テレビっていうのは遠くの映像を見ることの出来る装置のこと」


「千里眼?」


「とは違うけど……ね」


 苦笑してしまう。


 煙をプカプカ。


「ウーニャー……」


「ネットは情報を網羅した接続の海の事」


「ウーニャー?」


「膨大な情報の海から特定の情報だけを必要な時に引き出せる技術のこと。もっとも装置を必要とするけどね」


「ウーニャー」


「携帯電話っていうのはこっちの世界にある伝達機を手に持てるサイズに縮小して何時でも使えるように改良したモノって言えばわかるかな?」


「ウーニャー! 便利だね!」


「まぁね」


 煙をフーッと吐く。


「こっちの世界は巫女が望んでファンタジーな世界にしたんだからそこまでの発展は望めないかな?」


「ウーニャー! じゃあ魔術でパパの世界に跳ぶのは!?」


「異世界召喚が不可逆的じゃないなら出来るだろうけど」


 プカプカ。


「あっちの世界にウーニャーを連れていくのはなんともはや……」


「駄目なの?」


「とは言わないけど……」


 手応えを感じてピッと釣竿を引っ張る。


 川魚がもう一匹。


 三度釣り糸を垂らす。


「世間を騒がすこと必至だね」


「ウーニャー?」


「僕の元いた世界にドラゴンは存在しないんだよ」


「そうなの?」


「伝説としては伝わっているけど実在したって話は寡聞にして聞かないね。巫女の願いによってこの世界が生まれたというのなら即ちデミウルゴスによって生み出された存在なんだろうさ……ドラゴンってのはね」


「ウーニャー……複雑な気分……」


「デミウルゴス……か」


 フーッと煙を吐いて嘆息する。


「普通なら多世界解釈は互いに干渉できないはずなんだけど……いったいどういう了見だろうね?」


「ウーニャー。エヴェレット解釈?」


「そ」


 ちなみに二重スリット実験から始まりシュレディンガーの猫を経てエヴェレット解釈は異世界ガールズにも講義している。


「いや……待てよ?」


「ウーニャー?」


「もしも異世界召喚が可逆的で……しかもここ以外にも巫女じゃない奴が高位存在を観測した異世界があるならば……」


「あるならば?」


「非観測世界……つまり僕とツナデの元いた世界に異世界の常識が出荷されている可能性もある……のかな?」


「ウーニャー」


 頭上でウーニャーが頷くのが感じ取れた。


 薬効煙をプカプカ。


「考えすぎかな?」


「ウーニャー。デミウルゴスや類似存在が実在するならあながち否定も出来ないけど」


「ううむ」


 釣竿を握りながら呻いてみせる。


 話題変換。


「ウーニャー! ところでパパ!」


「何さ?」


「次行く国ってどういうところ!?」


「フォトンに聞いて。僕は知らん」


 そしてまた一匹川魚を釣り上げるのだった。


「神の国」編、これで終了です。

なぜ異世界は現実の世界と時間の流れが一緒なのか・・・なぜ太陽と月の運営が一緒なのか・・・なぜ人間という種が有り得ているのか・・・なぜ言葉が通じるのか・・・なぜ現実世界と共通点があるのか・・・それらについての一つの回答としてこの話を書きました。

正直この話を書くために「忍術師と魔術師の異世界観光日和」を書き始めたと言っても過言ではありません。

納得していただければ幸いです。

納得できなければ・・・申し訳ありません。

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